シンガポール・セントーサ島のカペラホテルで12日に開かれた米朝首脳会談で、拡大会合に臨む北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左端)とトランプ米大統領(右端)ら=ロイター
トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の首脳会談を受け、米議会からは12日、会談の開催自体は肯定的に受け止めつつも、「北朝鮮に譲歩した」などと野党民主党を中心に懸念の声が広がった。
民主党上院トップのシューマー院内総務は記者会見で、共同声明について「具体性に欠ける」と批判。「米国が得たものはあいまいで立証不能のものだが、北朝鮮は確実で永続的なものを得た」と指摘した。
非核化の期限や具体策は示されなかった一方で、トランプ氏が米韓軍事演習の中止にまで言及したことが批判の中心になった。
上院外交委員会のメネンデス議員(民主)は声明で「北朝鮮は譲歩を引き出した」と指摘。その上で、「大統領との会談は(正恩氏が)長く求めていた国際舞台での正統性を与えた」とし、「大統領は残忍な独裁者と笑顔で握手した。自国民を虐げ、親類を殺し、我々の安全保障を脅かす国際社会ののけ者にフリーパスを与えた」と非難した。
一方、与党共和党のライアン下院議長は声明で「大統領が朝鮮半島の永続的な平和への道筋をつけたという望みがある」と称賛した。ただ、「長く欺いてきた歴史を持つ残忍な政権に対処していることを我々は常に明確にしておかなければいけない」とした。
共和党のルビオ上院議員はツイッターに軍事演習中止について「不愉快だ」と表現。マイケル・グリーン米戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長は電話による記者会見で「非常に当惑させられるものだ。同盟国、国防総省も知らされていなかった」と指摘。「モスクワや北京には非常に心温まる進展だ」と皮肉った。(ワシントン=杉山正)