同点で試合を終え、あいさつを交わすスペインとポルトガルの選手たち=長島一浩撮影
(15日、ポルトガル3―3スペイン サッカー・ワールドカップ)
スタジアムをわかせた三つのゴールシーンよりも、印象的だった。
敗戦間際、救ったロナルドのハット 反則誘い…同点FK
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それは前半の立ち上がりにあった、ポルトガルの速攻。FWロナルドが、21歳のFWゲデスにワンタッチで球をさばき、加速して前へ出た。折り返しのパスを待っているように見えたが、ゲデスはシュートを狙い、相手選手に当たってチャンスはつぶれた。
積極性を見せた若手に向かって、12歳年上の主将は右手を突き上げた。「そうだ。それでいいんだ」と言わんばかりに。
5年前、W杯ブラジル大会出場をかけたポルトガルとスウェーデンによる欧州予選プレーオフの2試合を現地で見た。当時28歳のロナルドは、ハットトリックを含む2戦合計4ゴール。大車輪の活躍でチームを勝利に導いた。その一方で、欲しいときにパスが出てこなかったり、味方が簡単に球を失ったりすると、いらだちを隠さなかった。まさに「王様」だった。
サッカー選手として世界一の称号であるバロンドールの受賞は、アルゼンチンのFWメッシと並んで史上最多の5回。傑出した存在感が、ピッチの上で仲間を萎縮させていると感じることもあった。
その彼も33歳。所属するスペイン1部の名門レアル・マドリードで、2017~18年シーズンのリーグ戦で挙げたゴールは26。当たり前のように30~40得点をたたき出していた勢いは失われ、全盛期は過ぎたともささやかれる。
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15日のスペイン戦のロナルドはプレーで、声で、周りを鼓舞し続けた。数字には表れない献身性を、彼は身につけた気がする。ポルトガルのサントス監督は言っていた。「ロナルドは選手としても、主将としても偉大だ。素晴らしい影響をチームに与えている」。この夜、ポルトガルの選手たちは恐れではなく、信頼の名の下に体を張ってゴールを守り、奪った球をロナルドに託し続けた。
ロナルドはいう。「これは自分が何年もやってきた仕事。信念を持ち、犠牲を払うことでチームに信頼を与えなければならない」。チームの絆が強く結びついたからこそ生まれた3得点。ポルトガルの快進撃を、期待したくなる。(清水寿之)