新生フェスティバルホール初登場となるフランツ・ウェルザーメストは「ホールと対話し美しい響きをクリエートしたい」と語った
世界最高峰のオーケストラ、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が11月に大阪・中之島のフェスティバルホールで公演する。指揮はオーストリア出身のフランツ・ウェルザーメスト。ブラームスの交響曲第2番などからなる演目について「オーストリアらしさと、ウィーンの魂を感じてもらいたい」と語る。
プログラムはモーツァルトのオペラ「魔笛」序曲と、独奏にラン・ランを迎えたピアノ協奏曲第24番。そしてブラームスだ。
「『魔笛』には高い精神性と音楽の愉悦、第24番の協奏曲にはメランコリックでダークな味わいがある。どちらもウィーン的。ブラームスの2番には、作曲した場所である湖畔の美しい風景が溶け込んでいる」
中国出身のピアニスト、ラン・ランとは共演機会も多い。「テクニックは息をのむほど素晴らしい。オケをよく聴くピアニストで、いつも情熱的な対話が生まれる」。左腕の腱鞘(けんしょう)炎を患ったことにも触れ、「彼はリスクをチャンスに変え、以前よりも音楽をより深く演奏できるようになった。素晴らしいことだ」。
2002年から音楽監督を務める米の名門クリーブランド管弦楽団を率いて6月に来日ツアーを行い、ベートーベンの交響曲などで機能美に貫かれたダイナミックな音楽を聴かせた。「オケの響きは本拠地のホールの特徴が大きく関わる。クリーブランドのホールはどんな小さな音も明瞭に響き、透明感がある。クリーブランド管が細かいところまできちっと演奏できるのはそのためだ」
対してウィーン・フィルは、まろやかな響きで歌うように奏でるという。
「ウィーン国立歌劇場での毎晩のオペラ演奏と、本拠地ウィーン楽友協会が特別な響きを培った。そのサウンドと共に、私は音楽家として成長してきた」
1960年生まれのウェルザーメストは、小澤征爾の後を継いで10年に同歌劇場音楽監督に就任したが、14年「芸術的見解の相違」を理由に辞任した。
「ヒンデミットやヤナーチェクなど新しい演目をウィーンに増やしたいと考え、いくつか実現させることはできたが、その後の発展性について私と劇場側の間に温度差があった」
ウィーン・フィルとの関係が気まずくなったりしませんでしたか?と聞くと、マエストロは笑った。
「むしろ前よりよくなりましたよ。私が音楽監督を辞めたことを、団員みんながとても残念に思ってくれたから」
11月16日午後7時開演。S席3万7千円、A席3万2千円、BOX席4万3千円、バルコニーBOX席(2席セット)7万4千円。B~E席は完売。同ホールチケットセンター(06・6231・2221)。(小原篤)