夕暮れの名古屋の街を背景にビールを楽しむ人たち=11日午後7時5分、名古屋市中区、山本正樹撮影
今年もビアガーデンの季節が始まったが、名古屋市中心部の栄では2軒が今季で営業を終える。ビルの建て替えなどが理由だが、名古屋ではビルの高層化に伴い、屋上ビアガーデンができにくくなってきているという。
中区栄4丁目の中日ビルで11日、屋上ビアガーデンが今季の営業を始めた。仕事仲間と訪れた名古屋市西区の会社社長山本雅巳さん(51)は「屋上で飲むと風が気持ちよくて、よりおいしい」。
今年で53年目の老舗だが、ビルの建て替えのため、現在の建物では最後のシーズンとなる。新しいビルでも続けるかどうかは未定だ。
栄地区は、ほかに百貨店の丸栄と名古屋三越栄店の屋上にビアガーデンが集まる激戦区だ。そのうち丸栄も6月末に百貨店自体の閉店で営業を終える。中日ビルビアガーデンの広報担当、村瀬昌彦さん(47)は「これまで互いに高め合ってきた。この戦いが今年で幕を閉じるのは寂しい」と語る。
ある大手ビール会社の担当者は「ビアガーデンに適した屋上はないか」という相談を受けることがあり、「名古屋はビアガーデン熱が高い」と話す。だが、「ビルの高層化で適した場所が少なくなっていると感じる」とも指摘する。
2012年まで屋上ビアガーデン「マイアミ」があった名古屋駅前の大名古屋ビルヂング。34階建てに建て替えられた後、緊急用ヘリポートができて屋上は立ち入り禁止になった。現在は名古屋三越栄店に移ったが、マイアミの営業部長代理、小木曽寛さん(42)によると、仮に立ち入りができたとしても、高層のため強風の心配があり営業は難しかった。移転先を探した時は安全面の理由などからエレベーターが屋上直結ではなかったり、室外機などがあったりして、開設が難しいビルばかりだったという。「新しいビルでやるとなると、設計の段階から想定しないといけない」
名古屋駅近くの名鉄百貨店にも屋上ビアガーデンがあるが、名古屋鉄道は地上30階、南北400メートルの高層ビルへの建て替えを予定している。屋上ビアガーデンを開くかどうかはわからないという。(山下奈緒子)