体を前後に揺らす「反り」を披露する本荘の部員たち=2009年7月17日午前11時11分、こまち
夏の甲子園を過去4回経験した古豪・本荘(秋田)。同校の応援団には多くの伝統が残る。その一つが、男子生徒が横一列で肩を組み、応援歌に合わせて上体を前後に激しく揺らす「反り」だ。この独特の応援は、どのような経緯で始まったのだろうか。
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「意外と最近のことなんですよ」。教えてくれたのは1991年春に卒業した応援団OBで、会社員の金子正保さん(46)。卒業直後から仕事の合間を縫って、団のコーチを続ける。「肩を組んで後ろに反らすという動作は昔からありましたが、前傾して勢いをつけるようになったのは偶然のたまものなんです」
2004年夏の秋田大会準決勝。スタンドで応援していた男子生徒数人が突然、悪ふざけで体を大きく前後に揺らし始めた。
「動きは全員でそろえなくちゃ」。金子さんは急いで止めに入ろうとしたが、「あれ、かっこいいね」と他の生徒たちにたちまち広がっていったという。
その試合を制し、決勝で秋田商と対戦。験担ぎの意味も込めて、前後に体を激しく揺らす応援を続けた。試合は1―3で惜しくも敗れたが、新たな「伝統」が加わった。現在は、野球部以外に、サッカー部の応援などでも登場する。
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一方、古くから続くのが団歌練習だ。1年生は入学後まもなく、応援団の先輩からみっちり応援歌を教えてもらう。「声が小さい!」「もっと反れ!」。上級生が体育館で並ぶ新入生の間を歩き、声を飛ばし、新入生は怖がりながらも懸命に声を出す。
応援団は1970年代に最盛期を迎えた後は、団歌練習に代表される厳しさが時代に合わなくなったのか、志望者が減った。女子生徒が増え、チアリーダーにするべきではないかという議論が起きたこともある。それでも、かたくなに伝統を守ってきた。
金子さんが応援する楽しさに目覚めたのは、2年生になってからだ。「八橋球場で、自分の声が反響して返ってきたんです。気持ちよくて、『応援ハイ』になりました」
応援が後押しして試合に勝ったり、選手たちに感謝されたり。最初はつらくても、やりがいは大きい。だからこそ、先輩から後輩に受け継がれ、金子さんは25年以上も指導を続ける。
今夏は何人の生徒が「応援ハイ」になるのだろうか。(野城千穂)