トヨタ自動車は、中国での現地生産を大幅に増やす。2020年代前半にも、現在の約2倍にあたる200万台規模に拡大する検討に入った。成長が続く中国市場では独フォルクスワーゲンなどに後れをとってきたが、巻き返しを図る。
トヨタは中国では、現地メーカーの第一汽車、広州汽車との合弁会社で自動車をつくっている。17年の生産実績は前年比7%増の115万台で、生産能力の上限に迫っている。広州と天津の工場には新ラインを建設。さらに生産増強をする構えだ。
背景にあるのは中国の自動車市場の旺盛な需要だ。17年の新車販売は前年比3%増の2888万台。9年連続の世界一で、将来は4千万台規模まで達するとの予測もある。
トヨタは2000年以降でみると、尖閣諸島をめぐる日中の対立のあおりを受けた12年を除き毎年、右肩上がりで中国での販売を増やしてきた。17年の販売は前年比6%増、10年前の2・6倍の129万台。18年は9%増の140万台を計画する。中国政府の環境規制強化にあわせ、20年に電気自動車(EV)を投入する計画も発表している。
一方、トヨタの中国販売はフォルクスワーゲンのほか日産自動車やホンダにも及んでいない。中国進出が遅れたことが響いている。
主力の米国や日本市場に陰りがみえるなか、トヨタは伸びしろがある中国を「最重点地域」と位置づける。豊田章男社長は5月の会見で「中国をはじめとした急激に伸びている市場があることを重要視している」と発言。その直後、中国の李克強(リーコーチアン)首相がトヨタ自動車北海道を訪れた際にも「世界で一番速く成長している中国に一生懸命ついていきたい」と話し、市場攻略に意欲を見せた。
ただ、「顧客の好みが大きく変化する中国市場は甘くない」(幹部)とする見方もある。米中の貿易摩擦のあおりで景気が冷え込んだり、中国政府の政策や規制に戦略が左右されたりするリスクもあり、生産能力の増強を慎重に検討していく方針だ。(竹山栄太郎、初見翔)