住宅ローンを扱う独立行政法人・住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)は今年度から、賃貸住宅向けの融資基準を厳しくした。アパートやマンションを業者が一括で借り上げ、家賃も業者が一括で支払う「サブリース(一括借り上げ・転貸)契約」による賃貸物件が増え、空室の増加により将来、融資が焦げ付くリスクが高まっていると判断したとみられる。
アパート経営の「時限爆弾」、迫る20年代半ば
賃貸物件向け融資をめぐっては金融庁が地方銀行に対して昨年春、需要やリスクを審査し、借り手にもリスクを説明するよう注意喚起した。このため国内銀行全体の賃貸物件向けの新たな融資は2017年度に減少に転じた。新規融資が増え続けていた支援機構も18年度から融資の厳格化にかじを切ったことになる。
支援機構は、融資判断にあたって家賃収入や空室のリスクなどを審査する際、収支見通しなどを厳しくチェックするようにした。また、土地を購入してアパートを建てる場合の土地部分への融資を原則として停止した。サブリース契約の賃貸物件は、土地を持っている人に業者が勧めて建てるケースが多いが、アパートの建築用地も買うよう業者が勧めることがある。サブリース業界では「ランドセット」と呼ばれる営業手法だが、借り入れがより多額になることがある。
原則停止の理由について、機構の賃貸住宅推進グループは「今後の供給リスクなど社会情勢の変化をみて、総合的に判断した」と説明する。
賃貸アパートは相続税の節税にもなるとして建築が相次ぎ、日本銀行の統計によると、17年度末の個人の賃貸アパート向け融資残高は23兆2680億円と、6年連続で増えた。支援機構の賃貸住宅向け貸付金残高(17年度末)は1兆3946億円。17年度の融資契約額は約1900億円と、前年より約7%増加した。
しかし、空室が多い物件は、家賃保証期間を過ぎると業者から家賃の引き下げを求められることがある。家賃収入が減れば、融資が焦げ付くリスクも高まる。
今年3月には、支援機構への賃貸物件の融資申請件数が前年比8割も増えた。銀行の融資が減り、機構の審査基準も厳しくなることを見越し、「駆け込み申請」が相次いだとみられる。支援機構の担当者は「審査が厳しくなるということで、早めの建築をあおるセールストークの材料に使われた可能性がある」と話している。(北川慧一、大津智義)
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〈サブリース契約〉 オーナーが建てたアパートなどを業者が一括で借り上げ、入居者にまた貸しする契約のこと。30年や35年といった長期契約も多い。空室の有無にかかわらずオーナーには家賃が支払われる。入居者募集や管理などは業者側が行うため、オーナーの負担が軽いとされる。一定の家賃保証期間は決まった家賃が入るが、その後は業者から家賃の減額を提示されることがあり、減額をめぐるトラブルも起きている。賃貸住宅建設大手の大東建託グループやレオパレス21がこれまでに手がけたサブリース物件の多くは、家賃の固定期間が10年に設定されている。