民間資金でNPOなどの活動を支援する一般財団法人「中部圏地域創造ファンド」(理事長=稲垣隆司・元愛知県副知事)が名古屋市に設立され、動き出した。「持続可能な社会」などを掲げた愛知万博(2005年)の理念を継承し、東海3県に長野、静岡も加えた中部圏の市民活動や防災活動などを支援する。
「モリコロ」基金を継承
愛知万博閉幕後の07年、約13億円の剰余金を原資とする「あいちモリコロ基金」が設立され、10年にわたって1600件の市民活動を支援してきた。前払いで、活動費以外の人件費も対象にするなど好評だったが、原資を使い切り、今年度で活動を終える。
稲垣氏はモリコロ基金創設時の副知事。運営に携わったNPO法人「ボランタリーネイバーズ」の大西光夫・前理事長らと後継組織を検討。山田雅雄・元名古屋市副市長ら8人で2月、ファンドを設立した。「市民ボランティアに支えられた万博の理念を受け継ぎ、NPO活動を支援したい」と稲垣氏は話す。
「休眠預金」に期待
財源として期待しているのが「休眠預金」だ。10年以上出入金のない銀行口座の預金が毎年約700億円発生しており、これを民間公益活動の促進に充てるとする法律が今年施行された。来秋に全国約20~30の資金分配団体を通じて配るといい、その分配団体に手を挙げる。モリコロ基金が1件あたり30万~500万円、年間で計約1億円を分配したのに比べて規模が大きい。
もう一つの柱は地域の寄付金を原資とする活動だ。寄付者が名称や使い道を指定する「冠基金」のほか、ファンドが「南海トラフ地震対策」「ソーシャルビジネス支援」など事業ごとに基金をつくって寄付を呼びかける。冠基金の第1号は、東海労働金庫の「東海ろうきん 未来応援寄付金」で、今年度90万円。子どもの健全育成、就労支援の活動を支援する。すでに40件以上の活用申し込みがあった。
大阪がモデル
ファンドのモデルは、1991年設立の公益財団法人「大阪コミュニティ財団」。日本の地域ファンドの草分けで、大手のような自前財団を持たない中小企業や個人が社会活動に参加しやすくする狙い。延べ42億円の寄付金の7割は個人で、数万円から億単位の寄付もある。
ただ休眠預金の活用はまだ詳細が決まっておらず、中部圏でほかの団体も分配団体に立候補する可能性がある。愛知県の直接支援も期待されたが、セミナーや意見交換会などの間接的な支援にとどまった。
8月5日午後1時半から、名古屋市中村区那古野1丁目の名古屋国際センターで旗揚げフォーラムが開かれる。萩原なつ子・日本NPOセンター代表理事が休眠預金制度について講演し、モリコロ基金の運営委員や学者らでパネル討論をする。参加費2千円。問い合わせは中部圏地域創造ファンド(052・228・0350)へ。(編集委員・伊藤智章)