フィリピン南部ミンダナオ島で29日、反政府イスラム武装勢力「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」が集会を開き、イスラム系住民による自治政府の樹立を認める新法が成立したことを歓迎した。ただ、別の武装勢力の間には新法に反発する声もあり、幅広く理解を呼びかけていくという。
「新法は完璧ではないが十分だ。まずは我々が団結することが重要だ」。スルタンクダラットにあるMILFのキャンプ内で開かれた集会。ムラド議長が成立したばかりの新法を印刷した紙を手に理解を求めると、集まった数千人が大きな歓声を上げた。壇上に上がった地方支部の代表者らも口々に賛意を表明した。
26日にドゥテルテ大統領が署名して成立した同法は、ミンダナオ島西部の「イスラム教徒自治区」を廃止し、独自の議会や予算編成権など、より高度な権限を持つ自治政府を認める。MILFが長年成立を求めてきた。
「新法は我々の誇りを取り戻すために必要。ずっと成立を待っていた」。家族と集会に来た高校教師のジョアナ・アムナインさん(23)は言う。2歳から9歳まで4人の子供がいるというノルサラ・サンダイさん(37)は「自治政府が実現すれば、紛争は減ると思う。私は18歳で武装勢力に入ったが、子供はその必要がなくなるかもしれない」と期待する。
ただ、新法は自治政府の首相を停職させる権利を中央政府に与えるなど「本当に自治が認められる内容なのか」などと反発する声もある。ムラド議長は集会後に開いた記者会見で、「今後は他の勢力に対しても集会などで理解を求めていきたい」と述べた。(スルタンクダラット=守真弓)