劇作家、演出家で俳優の長塚圭史が代表の演劇プロデュースユニット「阿佐ケ谷スパイダース」が、劇団として生まれ変わった。一期一会のプロデュース公演に比べ、「手間と時間をかけて作れるのが劇団の良さ」と長塚。狙いについて「演劇は肉体的なものだから、刹那(せつな)的でない手触りが欲しかった」と語る。
1996年の旗揚げから20年以上経ち、長塚は「続けた先に何があるのか、見えなくなっていた」と振り返った。転機となったのは2014~15年、仙台に住み込み、地元の演劇人たちと創作に打ち込んだ経験だ。1年かけて木下順二の戯曲「蛙(かえる)昇天」に取り組む中で、「日々暮らしながら演劇に入っていって、そこから戻ってきてまた生活をする。ここまで没入できることがあるんだ、という発見があった」。
昨年暮れに開いた劇団員のオーディションには、約500人が参加。選ばれた7人が加わり、劇団員は裏方も含めて26人を数える。「将来的には100人くらいになればいいな」。いずれは全国各地にメンバーが散らばり、地方発の劇を作ることも思い描く。
新生「阿佐ケ谷スパイダース」初の本公演は、医療事故で妻を亡くした自称漫画家の孤独を描いた新作「MAKOTO」だ。長塚は「一人の人間を忘れようとするときの体力、明日を生き抜くためのエネルギーが奇抜な方へと向かう。思い出をどう乗り越えるかという物語」と話す。
9~20日、東京・吉祥寺シアター、前売り一般5千円。25、26日、大阪・あべのハルカスの近鉄アート館、前売り5500円。各プレイガイドで発売中。(岡田慶子)