7月、大阪・道頓堀の大阪松竹座で、関西で歌舞伎を盛んにしようと結成された、民間団体「関西・歌舞伎を愛する会」の40周年記念公演が行われる。会が後押しする形の公演が初開催されたのは、1979年。その頃、関西の歌舞伎興行は低迷していた。40周年を「感無量」と語る片岡仁左衛門に、今回の舞台にかける思いを聞いた。
療養中の澤村藤十郎さん、歌舞伎への思い「色々やったらいい」
仁左衛門は昼の部、名作「義経千本桜」の「渡海屋(とかいや)・大物浦(だいもつのうら)」で、悲劇の武将・知盛(とももり)を演じる。「いかに、戦いというものが空しいか。今読むと、反戦の狂言(演目)にも思える」
西海の合戦で死んだはずの平知盛は、ひそかに生き延び、船問屋の主人に身をやつし、幼い安徳帝や典侍(すけ)の局(片岡孝太郎)と共に報復の機会を狙っている。兄・頼朝との対決を避けて都を離れ、九州を目指す義経(尾上菊之助)一行を襲うが、返り討ちにあう。
重傷を負った知盛に対し、義経に保護された安徳帝は「恨みに思うな」と声をかける。「源氏への怨念に燃えていた知盛が、子どもに諭された瞬間、憑(つ)きものが落ちたように普通の人間に返って、大切な帝に苦しい思いをさせたというつらさを語る。今まで戦ってきた哀れが全部出てくるところが、好きですねえ」
初めて演じたのは、15年前。…