(8日、高校野球 日南学園2―0丸亀城西)
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ピンチでも、エースはマウンドで白い歯を見せた。
8日の第1試合で日南学園(宮崎)と戦った丸亀城西(香川)のエース、大前輝明君(3年)は2失点に抑える粘りの投球を見せた。
丸亀城西は昨秋や今春の試合で終盤に粘れずに負け、浮き沈みが激しいチームだった。河本(かわもと)浩二監督(51)はぶれない心を培おうと、グラウンドにスピーカーを置いた。試合では指示の声が歓声に消され、いつも通りにいかない。そこでノックや実戦練習のときに甲子園の実際の応援の吹奏楽や歓声を大音量で流した。
さらに投手陣には「相手スタンドからの声援も自分への応援と思え」「笑顔で投げられる人は強い」と言い聞かせた。今夏の香川大会全5試合に登板した大前君は、周囲が驚くほど笑顔を見せるようになった。
「課題だった終盤の粘り、諦めない姿勢が強くなり、チームは変わった」と主将の福田直人君(3年)。香川大会決勝では六回に2―4から逆転に成功し、13年ぶりの甲子園の切符をつかんだ。
河本監督は特別支援学校で20年近く勤めた経験がある。部員の選手としての精神力だけでなく、高校生としての心の成長を考え、昨春には野球好きな障害のある生徒らを招き、キャッチボールや打撃練習をして交流した。選手たちは「何か分からないことはある?」と声をかけ、バットの構えや捕球のコツなどを手取り足取り教えた。
主将の福田君は「それぞれ環境は違っても、野球をする姿は同じ。一生懸命やることの大切さを教えてもらった」。二塁手の中川斗蒼(とあ)君(同)は「思う存分に野球に打ち込み、甲子園を目指せるのは当たり前じゃないことだと気づいた。何より楽しかった」と振り返る。
そうした経験を重ねてたどり着いた甲子園。試合は0―2で負けたが、大前君は「ピンチでは『笑顔』『笑顔』と自分に言い聞かせた」と振り返った。福田君は「最高の思い出ができた」と汗をぬぐった。河本監督は「なかなか勝てないと言われたチームが夏に生まれ変わった。甲子園に連れてきてもらって感謝しています」とねぎらった。(福井万穂)