高松商は28日、2回戦で市和歌山(和歌山)と対戦し、2―6で敗れた。序盤の失点を取り返せず、3年ぶりの8強入りはかなわなかった。
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つかんだ舞台 2点適時打 上田蓮君
六回1死満塁で打席が巡ってきた。3球目。近くにボールが飛んできて、思わず顔をそらした。すぐに前に向き直し、投手をにらんだ。やっとつかんだこの舞台。負けたくなかった。
6番打者の上田蓮(れん、2年)は、真ん中に甘く入った4球目の直球を見逃さなかった。ボールは高く上がり、風の影響で右中間にぽとりと落ちた。走者2人をかえす適時打。相手はマウンドを降りた。
チームは本塁打で先制され、四回まで無安打。8点差で完封した1回戦とは全く違っていた。「流れが相手に行っていた。絶対に塁に出たかった」。五回にチーム初安打を放った。
野球を始めた小学校1年から投手だった。昨秋の県大会、四国大会も投手としてベンチ入り。しかし、メンバーが20人から18人になった明治神宮大会は選手を外れた。
同じ学年の選手は東京に行ったが、自分は県内に残った。「力不足が悔しくてしょうがなかった。メンバーがうらやましかった」
試合に出たい。チームメートから「打撃に集中したら」と言われたのをきっかけに、投手は諦めることにした。身長171センチ、体重83キロ。ベンチプレスも100キロ近くを持ち上げる。長打には自信があったし、投手だから肩も強いほうだ。
毎日、練習以外の時間にもバットを振り続けた。今大会でもらったのは背番号17。初戦は七回に代打で適時打を放ち、長尾健司監督は期待を込め、左翼手として先発で初起用した。
最後の打席は八回の2死一、二塁。遊ゴロに終わった。甲子園は5打席3安打。悪くない成績だが、「八回に打てなかったのが悔しい。夏に戻ってきたい」。また晴らしたい「悔しさ」ができた。(小木雄太)