(8日、プロ野球 巨人3―1阪神)
代打と同じ気持ちで臨んだ。一回2死二、三塁。巨人の阿部は、速球を空振りして、追い込まれた。この時点で「変化球も頭の隅に置きながらだった」。次に来たのは、またも147キロの速球。マウンドから打席まで、約0・45秒間で体を反応させ、外角高めをバットの芯でとらえた。
右翼席の中段まで届かせた白球を確認すると、一塁ベースを回ったときに右人さし指を立てた。「高めの球をうまく上からたたくことができた」。20歳下の阪神先発・才木に、強烈な先制3ランを見舞った。
6月17日以来となる先発起用は試合前に突如、決まったという。「少し緊張した。2打席目で足を上げたときには、つった。体がびっくりしちゃって」と39歳。最近はベンチに座り、試合に出ている若手に活を入れたり、指導したりする場面が増えていた。
チーム状況は良くない。野手では、坂本勇が左脇腹を痛めて離脱中。投手陣も故障者や状態が上がらない選手が相次ぎ、急場しのぎが続いている。
だからこそ、2014年までキャプテンを務め、7度のリーグ優勝を経験している「巨人の顔」にかかる期待は大きい。この夜も、吉川光が四球でピンチを作ると、間を取るために一塁からマウンドに向かい、声をかける場面があった。広島を追う今は、その存在が必要とされている時期だ。戦力としても、チームリーダーとしても。(井上翔太)