(18日、阪神4―3ヤクルト)
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その歓声はこの夜、神宮球場で一番温かかった。それでも、阪神の鳥谷はいつものように表情を変えない。ダイヤモンドを一周し、ベンチに戻ってから小さく笑った。
1点リードの六回、阪神ファンの待つ左翼席へ、白球が伸びた。外角に動く球を、腕が伸びたところでとらえたから力が伝わっている。「塁に出ようと思っていたのが、たまたまですね」。梅野の連続本塁打で流れを引き寄せた。
出場92試合目でようやく出た今季初アーチ。「うれしいんだか、悲しいんだか」。帰り際にもらしたひと言に、かつては生え抜きのレギュラーだった37歳の苦悩がにじむ。
プロ入りから15年連続となった本塁打は、これまでとは色合いが違う。今季は代打出場が多く、5月29日のソフトバンク戦では誇りにしてきた連続試合出場が「1939」で途切れた。試合に出続けられない立場で結果を残すのはたやすくない。忍び寄る衰えもある。金本監督は真顔で言った。「今季初めて外野の頭を越えたんじゃないか」
ただ、今月は先発出場が増え、この夜が8試合目。状況を読みながら対応でき、八回には右前安打を放ち、今季3度目の1試合3安打につなげた。「感じは悪くないので、明日も頑張ります」。ヤクルト、巨人との勝率5割を切るチーム同士の2位争いへ。鉄人と呼ばれた男の経験は、きっと生きてくる。(笠井正基)