猛暑が続くなか、総合商社が独自の熱中症対策に取り組んでいる。食料から不動産まで手がける総合商社ならではのやり方とは。
8月上旬、地上21階のオフィスビルを建設する東京都内の現場。作業員約250人が集まった朝礼に、ビル建設の発注元である住友商事の社員が箱を持って登場した。「皆さん、暑いなか建設作業ありがとうございます。熱中症対策でカリウム豊富なバナナを持ってきました」と330本のバナナを差し入れると、とび職人たちから拍手がわき上がった。
ビルの建設現場の夏場の環境は過酷だ。
施工を担う大林組の内藤恵介さんは「5月にもう30度超えです」と話す。5月に職人が自由に使える製氷機を置き、7月にはリーダーの「職長」に熱中症予防の指標になるWBGT(湿球黒球温度)付き温度計を配布した。さらに発注元の住友商事が、熱中症予防に役立つとされるカリウムを多く含んだフィリピン産バナナの差し入れと、豊富な商材を扱う総合商社の持ち味も生かして熱中症対策に取り組んでいる。
作業開始前、作業を請け負う2社の職人たちがさっそく「もぐもぐタイム」に。過酷な溶接作業を担うトラスト・ワンの椎名隆行さん(47)は「今夏はヤバい。尋常じゃない。毎朝青汁とバナナ1本食べてるけど、うれしいよね」。塩浜工業の本間勝也さん(43)も「職場は常時40度超え。非常にありがたい」。鉄骨作業の鈴木組の内田篤さん(43)も「しんどいのでうれしい」と喜んでいた。
住友商事によると、バナナの差し入れは昨夏から自社が手がけるマンションの建設現場で始め、記録的な猛暑となった今年はマンション以外の現場にも広げた。同社でバナナの輸入を担当する藤本宙大さんは「今夏の暑さはひどい。残暑のときもまた(差し入れを)検討したい」と話している。(鳴澤大)