ジャカルタ・アジア大会に出場したレスリング女子が全6階級で金メダルなしに終わった。アジア大会で2002年釜山、五輪では04年アテネから正式競技に採用されて以降、無冠に終わったのは初めて。日本のお家芸に正念場が訪れた。
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「日本のために金メダルを取りたいと思ったが、あまりにも(相手と)差があった。申し訳ない」。21日、最後のとりでだった76キロ級の皆川博恵(クリナップ)は、決勝戦で中国選手に完敗を喫し、うなだれた。
日本の成績は銀2、銅3、5位が1人。最低限の目標に掲げた「全員メダル」も果たせず、チーム内に重い雰囲気が漂った。
特に痛かったのが、リオデジャネイロ五輪63キロ級覇者で、62キロ級の川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)が銅に終わったことだ。笹山秀雄・女子監督は「組み手で崩して、完璧なタックルを決めようとしすぎた」と指摘。全員に共通する課題としてタックルの入り込み不足を上げた。
伊調馨(ALSOK)らへのパワーハラスメント行為が認定された、日本協会の栄和人・前選手強化本部長の辞任以降、初めて臨んだ大きな国際大会だった。
今回、栄氏が監督を解任された至学館大を練習拠点とする4選手は、軒並み不振だった。影響を問われた卒業生の川井は「もう私は社会人だし、自分で考えてレスリングができる。(栄氏解任は)関係ない。実力です」と言葉を強めた。
ただ、騒動によって日々の練習環境が落ち着かなかったことは、選手らも認めている。「金を取ることしか目標にしていなかった」。5位に終わった在学生の源平彩南(至学館大)は使命感に押しつぶされ、本来の力を発揮できていなかったように思えた。
長く日本女子をリードしてきた吉田沙保里(至学館大職)、伊調が第一線を離れても、昨年の世界選手権(パリ)では4階級で金メダルを獲得した。世代交代は順調に進んでいるように見えたが、各国の強化が著しいアジアの舞台で思わぬ落とし穴が待っていた。
「反省点が出たので、しっかり持ち帰って(10月の)世界選手権に臨みたい」と笹山監督。2年後の東京五輪でメダル量産が期待される競技だけに、立て直しが急がれる。(金子智彦)
レスリング女子のアジア大会、五輪の金メダル
【2002年アジア大会】(韓国・釜山)吉田沙保里(55キロ級)
浜口京子(72キロ級)
【04年アテネ五輪】
吉田沙保里(55キロ級)
伊調馨(63キロ級)
【06年アジア大会】(ドーハ)
伊調千春(48キロ級)
吉田沙保里(55キロ級)
伊調馨(63キロ級)
【08年北京五輪】
吉田沙保里(55キロ級)
伊調馨(63キロ級)
【10年アジア大会】(中国・広州)
吉田沙保里(55キロ級)
【12年ロンドン五輪】
小原日登美(48キロ級)
吉田沙保里(55キロ級)
伊調馨(63キロ級)
【14年アジア大会】(韓国・仁川)
登坂絵莉(48キロ級)
吉田沙保里(55キロ級)
渡利璃穏(63キロ級)
【16年リオデジャネイロ五輪】
登坂絵莉(48キロ級)
伊調馨(58キロ級)
川井梨紗子(63キロ級)
土性沙羅(69キロ級)
【18年アジア大会】(ジャカルタ)
なし