香取慎吾といくパラロード 2020年東京パラリンピック開幕まで25日であと2年。本紙パラリンピックスペシャルナビゲーターの香取慎吾さんが大会準備に忙しい、組織委員会のトップを担うあの人を訪ねた。 香取慎吾さん「新しい地図持って、前へ」 パラ応援宣言 「考えること多すぎ…」 香取慎吾さん、パラ陸上に挑戦 【特集】香取慎吾といくパラロード 森喜朗(以下、森) 元気だったか。慎吾さんにお礼を言いたかったんだ。 香取慎吾(以下、香取) ええ、お礼ですか? 森 パラリンピックに多くの国民が目を向けたこと、君たちのお陰だよ。 香取 いえいえ。最初は僕もパラスポーツの世界のことは知りませんでした。スペシャルサポーターやナビゲーターとして見て学んだことを、僕を通してみんなに知ってもらえたらいいなと思ったんです。 森 20年大会は1964年以来の同一都市2回目の開催で夏季大会では初めてだ。意義のあることだと思ったね。共生社会の実現のため、五輪とパラリンピックの大会準備を一緒にする組織委員会をつくった。 香取 そうだったんだ。 森 日本財団さんは「パラリンピックサポートセンター」を設立して組織が脆弱(ぜいじゃく)だった競技団体を支援してくれている。ありがたい。入り口にはあなたの壁画が飾られていたよ。感服した。本当に描いたのか? 香取 描きましたよ。10日間ほど改装工事の人たちと一緒に作業しました。センターの必要性などを知り、思いを込めながら描いたのでパラへの思いは強いです。あと2年です。森さんの今のお気持ちはいかがですか? 森 やれやれ、やっと来たかと。振りかえると苦労の連続だった。エンブレムは専門家に任せていいと思ったら批判を浴び、大会を主催する東京都の知事は今の小池さんで4人目。色んなしわ寄せがきた。それからは、例えばマスコットの選定は子どもたちに決定してもらうなど慎重にするようになった。だけど、当時は悪評高い組織委は悪魔の巣窟なんて言われてな。職員はつらかったと思う。 「パラの神様だな」 香取 大変な時期があったんですね。僕にとって2年はあと2年しかないという思い。より多くのひとに知ってもらうためにどうすればいいのか。パラスポーツの知識が増えてきただけに、みんなにももっと知って欲しい。 森 壁画も描いて旗振り役もして、まさにパラリンピックの神様だな。僕は社会を変えるには感動が必要だと思っている。昔は障害の部位を隠すのが普通だったが、今は堂々と見せて競技をする。さらにそのパフォーマンスを見て、驚きは尊敬に変わっていく。影響力のあるあなたたちが、そうした選手を応援したいと一生懸命やってくれて本当にうれしい。 香取 神様って……。頑張ります。五輪選手は練習環境が整い、最高の道具を与えられますが、ほとんどのパラアスリートはそうじゃない。それでも光り輝いている。その光を多くの人に見て欲しいと、ここまでやってこられたんです。 森 手伝うよ。国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長からも大会の特別親善大使にと言われたんだろう。行動と存在がそうさせたんだと思うよ。20年大会は多くの人に見てもらわないと。パラリンピックのチケット販売は約230万枚。僕も買えと言われたら買います。子どもたちに配るために。そんな時に黙って見ている慎吾さんではないと思いますが。 香取 僕も買います! 「会場に足を運んでもらわないと」 森 チケットは売り方を工夫して、家族やクラスで見に行けるようにしようかと思っています。小学校を順番に会場に招待してあげてもいいかも知れない。ただ、赤字にはできないので、若い人たちに買うように呼びかけて下さい。 香取 直接呼びかけます。「買って!」って。 森 慎吾さんはいくつだ? 41? 長い人生の2、3年、パラリンピックにさらにウェートをかけるのはどうだ。人間としてこんな素晴らしいことはないと思うよ。 香取 そうですね。 森 僕は今、がんの治療中で、右手の包帯はその副作用なんだ。やけどのような肌は薬が効いている証拠。45年間国会議員として国に尽くしてきたが、残りの人生も何かに尽くしたいとこの仕事を引き受けた。だから今、神様が守ってくれているんだよ。オリパラを成功させる。そして、その先に障害の有無に関わらず、みんなが楽しめる社会ができているんだと思う。 香取 そう思います。3月の平昌パラを現地で観戦しました。失敗した選手に「何をやってるんだ」という厳しい声を多く聞いた。その時、これはスポーツなんだと気付かされた。20年はそんな声を上げられる状況になっていて欲しい。それには20年大会が初めて見るパラスポーツではダメ。それまでに2、3度会場に足を運んで競技の魅力を知ってもらわないといけません。 森 なるほどな。教えられたよ。健常者の競技会にパラスポーツも入れて、まずは見て、なじんでもらえないかと。今の慎吾さんの言葉で思ったよ。パラアスリートはまさに命がけで競技と向き合っている。だから高いパフォーマンスを発揮でき、感動がある。その挑戦をみんなで応援していこうじゃないか。(構成・榊原一生) ◇ もり・よしろう 1937年、石川県根上町(現能美市)生まれ。69年に衆院初当選し、小渕恵三首相が脳梗塞(こうそく)で倒れ、後継として2000年4月に首相に就任した。12年に政界引退。14年から東京五輪・パラリンピック組織委員会会長。 かとり・しんご 1977年1月生まれ。神奈川県出身。88年にSMAP結成。ドラマや映画、CMなどに多数出演。17年から「新しい地図」の活動をスタート。絵画など創作活動にも打ち込む。昨年11月、朝日新聞パラリンピック・スペシャルナビゲーターに就任。平昌パラを現地で観戦した。 |
慎吾ちゃんは「パラの神様」 森喜朗会長と対談
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