今年6月、覚醒剤約100キロを密輸した疑いで福岡県警などが中国人や日本人の男7人を逮捕した。捜査では、発見した覚醒剤を別のものとすり替えて運ばせ、密輸グループを特定する「泳がせ捜査」が採られた。
泳がせ捜査
違法薬物や拳銃の取引情報を得てもすぐに逮捕せず、流通経路を割り出して密輸グループの摘発をめざす捜査手法。薬物については1992年に麻薬特例法が施行され、使えるようになった。薬物などを偽物にすり替える「クリーン」と、そのまま犯人側に所持させる「ライブ」がある。犯人が所持するのが偽物であっても、薬物犯罪を犯す意思をもって取引すれば検挙できる。
逮捕の約1カ月前、大阪港近くの倉庫。数十人の捜査員がひそかに集まった。目的は14個の段ボール箱。中には、家具の材料になる木板が積み重ねられていた。慎重に1枚ずつ取り出す。中ほどの木板は中央部がくりぬかれ、白い粉が入ったポリ袋が並べられていた。
「覚醒剤だ。間違いない」
ポリ袋の量は約100キロ。す…