(19日 DeNA6―1巨人)
外角に構えた捕手のミットとは逆に、速球は真ん中へ入った。七回2死。飛球が右翼席に飛び込む。1994年5月18日の槙原(巨)以来となる完全試合も、今季2人目の無安打無得点試合も消えた。すぐさまマウンド上にいたDeNA東(あずま)のもとへ、内野陣と篠原投手コーチが集まった。
「ホームランは予想してなかったわ、ごめん」と捕手の伊藤。東によると、他の野手陣からは「大丈夫、大丈夫」と声をかけられた。「悔しいというより、ホッとした。走者が出ていないのは分かっていた。けど正直、安打でリズムを崩されるよりは良かった」。その中心で笑顔を見せ、続く岡本は制球ミスをすることなく二ゴロに仕留めた。
今月5日の巨人戦で坂本勇とゲレーロが復帰した打線に勝ち、目標の2桁勝利に達した。次にめざすものは? と聞かれると「定めない。あと全部負けたら、意味がないので」。クライマックスシリーズ進出の圏内にいる中での「重要な一戦」と自身に重圧をかけ、マウンドに上がった。
この日は先発に右打者8人を並べた相手打線に対し、速球でバットを押し込み、チェンジアップでタイミングを狂わせた。速球を引っ張られた打球は、打者25人のうち5度だけ。これで巨人には、5戦5勝だ。
点差が開き、8回100球で降板。チームは3位巨人に0・5ゲーム差に迫り、21日から12連戦を迎える。正念場を前に、弾みがつく新人の快投だった。(井上翔太)