(28日、プロ野球 西武5―3ソフトバンク)
気遣いの人、雄星が見せた一度きりの激情 V目前西武
西武が10年ぶりVに王手 ソフトバンク破り12連勝
プロ入り9年目にして、初めて手にしたソフトバンクからの勝利。お立ち台で感想を問われた西武の菊池は、思わず涙ぐみ、しばらく言葉を発することができなかった。絞り出すように言った「大きな1勝です」という言葉に、全ての思いが詰まっていた。
過去18戦は0勝13敗。相性の悪さは3点リードの三回に顔をのぞかせた。一塁手・山川の悪送球から崩れる。「もったいないという思いを持ったまま、投げてしまった」
中村晃に左前へ同点打を許し、なお2死一、三塁。菊池はマイナス思考を振り払うように首を2度、3度と左右に振る。冷静さを取り戻し、打ち気にはやる松田宣を、大きなカーブで三ゴロに仕留めた。
20年ぶりに本拠で優勝するため、チームはこの3連戦を最大の山場と位置付け戦ってきた。その大事な2戦目を任され、重圧も感じていたという。
「早くソフトバンクから勝ち星がほしいって思っていた。エースと言われても、ここを乗り越えないと本当の意味で認めてもらえないって」。これまでの苦しい胸の内を明かした。
我慢を続けたエースに中村が勝ち越し点をプレゼントし、チームは優勝に王手を掛けた。8年ぶりにソフトバンク戦の勝ち越しもきまった。それ以上に、クライマックスシリーズでも対戦する可能性がある相手への苦手意識をエースがぬぐい去るという、貴重な勝利となった。(松沢憲司)