プロ野球・西武ライオンズの10年ぶりとなるリーグ優勝が近づいてきた。現時点で開幕から1度も首位を譲っていない。今季、チームの打撃陣を引っ張ってきた1人は、秋山翔吾だ。2016年の西武担当記者が、秋山の印象的なシーンを振り返った。
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秋山は苦しんでいた。2年前のことだ。
前年の2015年は日本新記録の年間216安打を放ち、打率3割5分9厘。他球団の徹底マークにどう対応するかに注目していた。結果は年間171安打で、打率2割9分6厘、自己最悪の103三振。「しっくり来た時期は一度もなかった」と吐露した。
悩みは打撃練習から伝わってきた。フォームの細かな変化に気づきたいと、三塁ベンチ前から左打席に入る秋山を見るのが記者の日課だった。バットを寝かしたり、トップの位置を下げたり体から離してみたり。試行錯誤は試合後も続く。本拠地の試合で家路につくのは、チーム内では最後の方だった。室内練習場で1時間以上打ち込む日もあったからだ。
治療器具を抱えて帰宅する日もあった。故障の可能性を聞くと、足の方向に目線を落とし、「試合は出られます。今は書かないでください」。故障が伝われば相手の配球が変わる。試合に出る以上、隙はつくりたくない。昨年のワールド・ベースボール・クラシックで、右足の第5指骨折を抱えつつ日本代表でプレーしたことに驚きはない。
バットを振り込んで苦境を乗り越えた秋山。打線で最も頼れる存在になった。(2016年 西武担当・遠田寛生)