北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との2回目の会談に意欲を見せる一方で、中国には未曽有の規模の貿易戦争を仕掛け、同盟国にも容赦なく批判を浴びせる。対話なのか、対決なのか。予測のつかない「トランプ流」に世界が翻弄(ほんろう)されている。国際社会の安定と繁栄を主導してきたはずの伝統的な米国の外交は変質してしまったのか。
無謀な決定次々、奔走する側近
「ツートラック(2本線の)大統領制」。ニューヨーク・タイムズ紙に匿名で投稿した米高官は、政権の内情をそう吐露した。気まぐれで無謀な決定を繰り出すトランプ氏と、修正や収拾に奔走する側近たち。
最近、非公式の席で「米国の外交」と「トランプ氏の外交」を分けて語る政府関係者が目立つ。前者は自由や同盟関係など米国が伝統的に重視してきた理念や原則に基づき、政府内で手順を経て策定された政策。では「トランプ外交」とは何か。
トランプ氏は6月の米朝首脳会談で金正恩氏を「相性がよい」とたたえ、7月の米ロ首脳会談ではプーチン大統領を「良い競争相手」と持ち上げた。一方、欧州連合(EU)を「敵」と呼び、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国を軍事費負担が少ないと厳しく責め立てた。
外交舞台での一連の言動から浮かび上がるのは、独自の主張を通しにくい多国間の枠組みを嫌い、議会など国内事情に縛られる民主国家の首脳よりも独断即決で「取引」できる強権指導者との対話を好む姿勢だ。
そうさせる根底に、歴代大統領…