北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉をめぐり、米国とカナダとの協議が9月30日深夜、合意に達し、8月末に米国と「予備的合意」に達したメキシコを交えた3カ国で妥結した。トランプ米大統領の通商政策の要となるNAFTAの見直しに向け大きく前進。米国や北米域内での自動車や部品の生産を増やす方向での見直しが含まれ、日本メーカーの今後の投資計画にも影響が出そうだ。
トランプ氏がカナダ脅す発言流出 NAFTA合意ならず
トランプ氏はNAFTAについて、米国から雇用を流出させたと強く批判し、2017年8月から再交渉に着手した。9月30日深夜、ライトハイザー米通商代表とカナダのフリーランド外相が「より自由な市場と公正な貿易、たくましい経済成長をもたらす貿易協定を、我々の労働者や農家、企業に提供できる」との声明を発表。3カ国による新たな協定は、「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」と名称を改める。
ロイター通信によると、トランプ氏がカナダにちらつかせてきた輸入車への高関税措置の回避に向け、カナダが自動車輸出が一定以上の水準まで増えれば数量規制に応じることで合意したという。合意内容によっては、カナダで生産する日本の自動車メーカーへの打撃が懸念される。
米政権は8月27日、農産品分野などで対立が残るカナダを置き去りにする形で、メキシコとの二国間で「予備的合意」に達した。北米域内の部品をより多く使うよう求める「原産地規則」の見直しなどが柱だ。9月末は米・メキシコの協定文書を公表する期限で、カナダとの交渉の節目でもあった。
メキシコでは12月、新大統領にロペスオブラドール氏が就任。米国内法では協定署名の2カ月前までに協定の文案を公表することになっており、ペニャニエト現大統領との間で署名にこぎ着けるには、9月末までに協定文を示す必要がある。この期限までにカナダを含めた合意ができるかが焦点となっていた。(ワシントン=青山直篤)