トランプ米大統領は25日午前(日本時間同日夜)、国連総会で一般討論演説を行った。北朝鮮問題への対応などを実績としてアピールする一方、「公平で互恵的」な貿易を目指した中国との通商紛争では妥協しない姿勢を強調。米国の利益の最大化を目指す「米国第一主義」を改めて前面に押し出した。11月の米中間選挙を前に、米国民へ向けて事実上の選挙演説をした格好だ。
トランプ氏は演説冒頭、「株式相場は歴史的な高水準、失業率も50年ぶりの低さだ。大型減税も行った。国境で巨大な壁の建設も始めた。米軍は、まもなくかつてないほど強力になる。米国はより強く、安全で豊かになった」と訴えた。
中国との通商問題では、「貿易は公平で互恵的でなければならない」と指摘。「中国がWTO(世界貿易機関)に加盟して以来、米国は製造業で300万人以上、鉄鋼業で全体の4分の1近くの仕事が奪われ、6万もの工場も失われた。そんな侮辱をもはや許さない」とし、「習近平(シーチンピン)国家主席には大いなる尊敬と好意を抱いているが、貿易の不均衡は受け入れられない。米国は国益に基づいて行動する」と強調し、中国に妥協しない姿勢を示した。
北朝鮮問題については、「金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が踏み出した勇気に感謝したい。我々が導いた今この瞬間は、人々が考えるよりもはるかに大きなものだ」と述べ、核実験やミサイル発射を自制していることを成果として誇った。
イランの核・ミサイル開発問題については、「イランの政権は近隣諸国の国境や主権を尊重せず、暴力を振りまいている」と厳しい言葉で非難。トランプ政権が離脱を決めたイラン核合意については、「核合意はイラン指導者にとって、もうけものだった。イランは軍事費を増やし、核開発を進め、テロリストを支援している」と正当化し、イランへの経済制裁に同調するよう各国に呼びかけた。
また、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への米国の拠出金の完全停止にも言及。「米国は海外支援で世界最大の拠出国だ。しかし、米国に何かをくれる国はほとんどない」と不満を表明した。そのうえで、「米国を尊敬する国、ざっくばらんに言えば友達だけを援助する。その他の国には、相応の防衛費を支払うよう求める」と警告した。(ニューヨーク=土佐茂生)
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トランプ大統領が25日に国連総会で行った演説の骨子は以下の通り。
●我々は2年足らずで歴代の米政権以上の成果をあげた
●米国はより強く安全で豊かになった
●北朝鮮とは生産的な対話を行い、朝鮮半島の非核化を目指すことは共通の利益であると合意している
●イランの指導者は混乱や死、破壊の種をまいている
●貿易は公平で互恵的でなければならない
●中国は市場をゆがめており、中国の取引のやり方は許容できない
●米国は米国民が統治する。グローバリズムのイデオロギーを拒絶し、愛国主義を選ぶ
●米国は世界最大の援助国だが、今後は我々を尊敬する国だけを援助する