(13日、セ・リーグCS第1S 巨人4―1ヤクルト)
これが無欲で臨める3位の利点か。巨人は早めの継投がピタリとはまった。今季限りでの辞任を表明している高橋監督は、ピンチで同い年の上原に賭けた。
43歳の出番は、1点リードの五回。この回が始まったときから肩を作り始め、急にそのペースが速まった。2死二塁から山田哲を迎えたところで、他の救援陣から「力水」をもらい、マウンドへと走った。
いざ勝負。速球は140キロに満たなくても、プロ20年間で培った投球術がある。打者のタイミングを外し、高低、内外を使った制球が光った。4球目。低めに沈む変化球でバットに空を切らせ、ほえた。大リーグ時代から続けるハイタッチを仲間と交わし、三塁側から万雷の「ウエハラ」コールが響いた。
救援投手は今季の泣きどころだ。マシソン、カミネロはけがで帰国。3月に入団が決まり、春季キャンプを過ごしていない上原も例外ではなく、黒星を重ねた。一時は防御率が10点台になり「実力不足」と嘆いた。球宴に選ばれても「それに伴う成績を残せていない」と複雑そうだった。
「あれこれ考えても疲れるだけ」と回をまたいでも気にせず、続く六回は中軸を三者凡退。レギュラーシーズンを通じて日本球界復帰後、初勝利をつかんだ。「短期決戦は誰が勝つかより、チームが勝つことが大事」と上原。菅野、メルセデスを使わずして先勝した価値は計り知れない。(井上翔太)
○高橋監督(巨) 上原の好投について、「(相手の)流れを止めるためにいってもらった。場数を一番踏んでいる投手。それを出してくれた」。
○岡本(巨) 一回に先制の右犠飛。「何とかバットに当てようと思っていたが、いいところに飛んでくれた。(初のCS出場も)普段通りにできた」
○今村(巨) 五回途中1失点の好投。「いい緊張感で投げられた。(自分が招いた五回2死二塁のピンチを)抑えてくれた上原さんに感謝です」
●小川監督(ヤ) 先発の小川について「良い時と悪い時があるが、今日は良い方じゃなかった。今日は終わってしまったので、明日頑張るしかない」。
●山田哲(ヤ) 五回、上原に空振り三振するなど無安打。「短期決戦は結果がすべて。まだ(とり)返せると思うのでチーム全体で勝ちにいきたい」
●青木(ヤ) 左太もも裏を痛めながらベンチ入り。「短期決戦は流れをどうつかむか。五、六回から準備はしていた。明日勝てるようにしたい」