就任4年目で3回目となる日本シリーズ。西武や巨人などで活躍した現役時代は「優勝請負人」とも呼ばれ、大舞台をくぐり抜けて培った勝負勘なのだろう。ソフトバンクの工藤監督は采配をためらわなかった。
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五回、大瀬良からようやくつかんだ2死二、三塁の好機だった。四回までの走者は四球の1人のみ。工藤監督は、一回に2失点した千賀をあきらめ、デスパイネを代打に送った。助っ人の強い打球は中前へ抜けそうな当たりとなり、菊池に好捕されたものの、適時内野安打に。一塁送球が後逸も誘い、追いついた。
敵地のマツダスタジアムでは指名打者が使えない。守備に難があるものの、当たっているデスパイネをどう使うかが、1、2戦目の一つの焦点だった。
試合前に強く吹いた冷たい風。工藤監督は上空を見やりながら、デスパイネの起用法を明かした。「(外野守備走塁の)村松コーチに聞くと、風が吹くと外野の守備が難しくなる。今日は、ここ一番のところでいってもらう」。短期決戦でまずは守りを優先し、左翼の先発出場はデスパイネではなく、中村晃だった。
もちろん、先手先手で勝負できるのは武田と今季13勝の石川が「第2先発」として控えているからこそ。五回以降、工藤監督は武田、石川らを惜しみなくマウンドに送り、延長十二回まで決勝点を与えない。勝ち越せなかったものの、厚い選手層から引き出した「最適解」で引き分けに持ち込んだ。(笠井正基)