これぞ、4番だ。
延長十回。先頭でソフトバンクの柳田が打席へ。広島の守護神、中崎の投じた2球目の内角への123キロ。体をちぎれんばかりに回転させて、バットを振り切る。日本シリーズで本拠12連勝を決めるサヨナラ本塁打の打球が、右翼テラス席へと飛び込んだ。柳田は「リラックスして打とうと思った」。声が弾んだ。
規格外のパワーが、決勝アーチをかけた。「(本塁打は)頭の中になかった」と言いながら体が反応。「バットは折れた」というが、身長188センチ、体重92キロに込めた力で運んだ。
ソフトバンクは、なりふり構わず、勝ちにこだわった。四回。1点をリードしてなお無死一、二塁。さらに追加点の欲しい場面で6番内川が犠打。通算2043安打のヒットメーカーは、2011年にソフトバンクに加入してからレギュラーシーズンで犠打が一つもなかったが、前日第4戦までの打点は「0」。主に昨季まで4番だった36歳にも、プライドを捨てさせた。だが、後続が倒れ、試合はもつれていった。
誤算だったのが、今シリーズでいずれもチームトップの2本塁打6打点を記録していた5番デスパイネの欠場。ひざの状態に不安を覚えた長距離打者を欠き、ベストオーダーが組めない戦いを強いられていた。
その苦しい状況を、4番が救った。3日からは柳田の故郷、広島に舞台を戻す。今季から選手会長を務める主砲は言った。「みんなで束になれば勝てる」(堤之剛)