広島に投下された原爆の爆心地を指し示すように傾いている被爆樹木がある――。そんな研究結果に心を動かされ、広島市の主婦たちが絵本作りを進めている。木という物言わぬ証人を通し、子どもたちが平和を考えるきっかけになれば、と願う。
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広島・長崎の記憶
広島市南区在住の藤原美香さん(42)と村本美香さん(43)は、小学校での読み聞かせボランティア仲間だ。昨年11月、藤原さんは被爆の影響で傾いている樹木があると伝える紙芝居をみた。「あの日を忘れないで、と言っているみたい」と驚き、絵本にできないかと思い立った。
被爆と樹木の傾きの関係は、筑波大名誉教授の鈴木雅和さん(66)と、被爆樹木の保存に取り組む広島市在住の樹木医、堀口力さん(73)らが研究。約160本ある被爆樹木のうち、移植されておらず、幹が1本で傾きが測れるなどの条件を満たした29本を分析すると、23本が爆心地側に傾いていた。熱線などによるダメージで爆心地側の成長が遅くなることが原因とみて2014年、論文を発表した。紙芝居を作ったのも鈴木さんだ。
爆心地を静かに指し続ける木に…