台湾の統一地方選で南部・高雄市長に中台関係の改善を訴えた野党・国民党の韓国瑜氏が当選したことを受け、中国側がさっそく、国民党系の首長が当選した自治体を取り込む姿勢を見せている。中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室の報道官は28日の記者会見で「既に高雄に団体客が向かっている。良い知らせの始まりだ」と述べ、経済的な優遇を図る考えを示した。
報道官は「(与党の)民進党当局が設けた障壁を早く排除すれば、台湾同胞の得る利益も大きくなる」と述べ、利益誘導を通じて、台湾政治に介入する姿勢を示した。
当選した韓氏は選挙中、中国市場とつながり、地域経済を活性化させると主張。民進党の蔡英文(ツァイインウェン)政権下で中台関係が冷え込み、観光客が減ったことへの不満を支持につなげた。韓氏は同日、中国からの観光客を「歓迎する」と語った。
一方、地方選で敗れた民進党は28日、幹部会議を開催。党主席を辞任した蔡総統は冒頭で党員や支持者に謝罪し、「改革の方向は間違っていない。その過程で人々の不満が累積してしまった」と指摘。「民進党は失敗の度に反省して立ち上がってきた。私はこれから今までと全く違う総統になる」と語った。報道陣が2020年総統選への出馬の意思を尋ねたが、一瞬沈黙し、「党務と関係ない質問だ」と回答を避けた。
民進党は当面、林右昌基隆市長を代理主席とし、数カ月内に新主席を選び、総統選へ新態勢を整える。(台北=西本秀)