「性的嫌がらせ(セクシュアルハラスメント)が生物多様性を維持する」というタイトルの論文を京都大の講師が英科学誌に発表し、ネット上で批判があがる騒動となっている。論文では生態学の専門用語として使っており、社会問題のセクハラとは無関係だが、講師と科学誌は論文タイトルの変更を検討している。
今回の論文における「性的嫌がらせ」とは、同じ種類の生物で、オスがほかのオスの交尾をめぐる行動を妨害するような性質を指す。こうした性質は、同種類の生物の個体数の増減に関わる。だが、多様な生物が共存する自然界全体への影響はわかっていなかった。
論文は、数百種類の生物が性的嫌がらせの影響で長期間共存できることをシミュレーションで示した。英科学誌電子版に11月14日、掲載された。
論文のタイトルなどは同誌のサイトで誰でも見ることができ、英語圏のネット上で、研究者を中心に「不適切を超えている」「常識外れだ」などの批判が続出。同誌はツイッターで「意見は把握しており、対策を検討している」と表明し、講師とタイトル変更を検討している。講師は「専門分野では普通に使ってきた言葉で、びっくりしている」と話している。ネット上では「学術用語の方が古くから使用している」とする意見もある。
京大は論文発表時に公表したプレスリリースで、表題には論文タイトルにない「性淘汰(とうた)」という言葉を使用。資料中で「社会問題としてのセクハラとは一切関係ない」と注釈を付けていた。京大国際広報室の担当者は「当初から誤解される懸念があった」と説明している。(野中良祐)