京都大iPS細胞研究所は28日、所属研究者が責任著者となっている論文1本を撤回したと発表した。京大が今年3月、研究不正があったとして懲戒解雇した同研究所の特定拠点助教が筆頭著者で、実験データが残っていなかった。
撤回した論文は、「万能細胞」の一種であるES細胞の性質を調べたもので、2012年に米科学誌「セル・ステムセル」(電子版)に掲載された。
今年1月に元助教の研究不正が明らかになったことを受け、論文の責任著者の山下潤・同研究所教授が元助教の関与した過去の論文を自主的に点検。実験に使われた細胞が正しく保存されていなかったり、記録が残されていなかったりしたことがわかったという。
不正の有無までは調べていないが、その前段階であるデータに不備があったとして、科学誌の編集者に報告。「撤回が妥当」との回答を得た。これを受けて論文の著者全員が撤回に同意。科学誌が撤回を決めた。山下教授は「指導・監督が不十分であったことを深く反省している」とのコメントを出した。(野中良祐)