国内製薬最大手の武田薬品工業の臨時株主総会が5日午前10時から、大阪市で始まった。アイルランドの製薬大手シャイアーを約7兆円で買収することの賛否を株主に問う。買収の成立には議決権ベースで3分の2以上の賛成を得る必要があり、日本企業による過去最大の買収案件に対する株主の賛否が注目される。
武田は5月、シャイアーを総額約460億ポンド(約7兆円)で買収することで同社と合意した。シャイアーも5日(日本時間同日夜)に臨時株主総会を開いて、株主に賛否を問う予定。両社の株主総会で承認が得られれば、年明けにも買収手続きが完了し、世界の製薬企業の売上高トップ10に入る「メガファーマ」が誕生する見通しだ。
シャイアーは血友病など希少疾患の治療薬や血液製剤に強みがある。開発が最終段階にある新薬候補を複数持ち、遺伝子治療の分野も得意とする。2017年の売上高は日本円換算で約1兆7千億円と、武田とほぼ同規模。世界最大市場の米国での売上高が多く、武田は海外の販路拡大も狙って巨額のM&A(企業合併・買収)を決断した。
買収資金は、約3兆円の現金と約4兆円の新株発行でまかなう計画だ。武田薬品の有利子負債は買収前の約10倍の5兆円超に膨らむ見通しで、財務悪化と背中合わせの買収にはリスクも伴う。
創業家出身で、元社長の武田国男氏(78)がシャイアーの買収に反対していることが11月に伝わった。創業家の持ち株比率は数%程度とみられ、国男氏の意向が創業家を代表するものかどうかも不明だが、他の株主の判断に影響を及ぼす可能性がある。5日朝、総会の会場を訪れた男性株主(65)は「国男さんが買収に反対しているのを報道で知り、大変なことになったと思って駆けつけた。経営陣が買収の意義をどう説明するかじっくり聞きたい」と話した。
シャイアーの社外取締役3人を、武田の社外取締役として迎える議案も提案される。この人事案は株主の過半の賛成で承認される。(箱谷真司)