新薬を安く ペプチドで挑む 90人の会社、世界が注目——贯通日本资讯频道
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新薬を安く ペプチドで挑む 90人の会社、世界が注目

遺伝子組み換え技術などを駆使した新しい薬が近年、がんなどの病気に治療の道を切り開いた。ただ、製造の難しさなどから値段が高騰し、新たな課題となっている。同じような効果を持ちながら、格段に安い薬がつくれないか。そんな夢を追う企業に世界から注目が集まっている。


「様々な企業からの依頼に基づき、特殊なペプチドをつくる世界初の工場になります」。5月下旬、川崎市に本社を置く「ペプチドリーム」の窪田規一会長(65)は、国内の製薬大手などと大阪府内に共同で建設する原薬工場の起工式で言葉に力を込めた。


2006年創業の同社は社員約90人の小所帯。しかし、会社の価値を示す株式の時価総額は約4600億円と、日本の製薬関連銘柄でトップ20に入る。英アストラゼネカやスイス・ノバルティスなど海外の製薬大手からも共同研究の声がかかり、国内外の約20社と薬の開発を進めている。


世界の注目を集めるのは、新たな薬の「種」となるアミノ酸の集合体「ペプチド」だ。人間の体内にある普通のペプチドはすぐに分解され、なくなってしまう。そのため、薬にはなりにくいとされてきた。


しかし、創業者の一人で東大大学院教授の菅裕明(55)は30年前に渡米した際、このペプチドを研究する道を歩んだ。「周りは頭のいいやつばかり。競合が多い分野で競争しても負ける」と考えたからだ。


人工の触媒を使い、体内で分解されにくい特殊なペプチドをつくる技術を03年に確立。1兆以上の種類をつくることにも成功し、新たな薬が見つかる可能性が大きく広がった。菅は「異端は認められた瞬間、先端になる」と信念を語る。


ペプチドの最大の利点は値段の安さだ。比較的単純な構造で、化学合成で大量生産できる。がんなどの治療で導入が進む「抗体医薬品」などの高額薬と同じ効果を持つペプチドがあれば、薬の値段が10分の1になる可能性があるという。


14年に国内で発売された抗体医薬品「オプジーボ」の値段は当初、1人あたり年間3千万円超。1カ月あたり100万円以上するような薬の開発は今も続々と進み、公的保険の負担は重くなる一方だ。「いいものを安く患者さんに提供し、医療費全体を減らす」(窪田)ことが目標だ。


ビジネスモデルもユニークだ。ペプチドリームが製薬企業に薬の種を提供し、共同開発の進み具合に応じて成功報酬を受け取る仕組み。資金が続かずに消える企業が多いなか、8年連続で黒字を維持する。


新薬開発の成功率は数万分の1とされ、世に出るまでには多くの時間と費用がかかる。同社が手がける約80の薬もまだ二つが臨床試験に入ったばかりで、実際にどれだけの薬をものにできるかは未知数だ。原薬工場を軌道に乗せられるかも、試金石の一つとなる。


ただ、ペプチドを使った薬の開発がうまくいけば、抗体医薬品の開発に乗り遅れた国内業界を再び活気づける契機になる。今の日本は、医薬品で大幅な輸入超過の状態にある。窪田は「出遅れをひっくり返し、10年後、20年後にこの国を支える基幹産業にできたら」と話す。=敬称略(岩沢志気)



〈ペプチド〉 アミノ酸が二つ以上結合したもの。50以上の集合体になると、たんぱく質とよばれる。がんなどの治療に使う抗体医薬品はたんぱく質を主成分とするが、構造が複雑で開発に時間がかかるほか、製造には遺伝子組み換えや微生物を培養する大がかりな設備が必要で多額の費用がかかっている。近年の研究で、人工的につくった特殊なペプチドで置き換えられる可能性が出てきている。


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