成田空港の警備にあたっている千葉県警の成田国際空港警備隊(空警隊)について警察庁は来年度、再編成する方針を決めた。隊員を今の1500人から1千人に縮小すると同時に、銃などを使ったテロに対応する専門部隊を設置する。成田空港をめぐる情勢の変化をふまえ、隊発足から40年で初めて体制を大きく見直す。警察庁は「合理化とともに、テロ対応能力の強化を図る」と説明している。
成田空港では1978年3月に反対派活動家らによる管制塔占拠事件が起き、開港が約2カ月延びた。これを契機に、空港の安全確保のため同年7月に空警隊を設置。約1年半後には1500人体制になった。千葉県警と全国の都道府県警から出向した警察官で構成。年間約120億円の経費は国から千葉県への補助金を中心に、国が全額負担してきた。
空港周辺では、空港反対運動や過激派による飛翔(ひしょう)弾を使ったゲリラ事件などが続発。空警隊は集会やデモの警備のほか、飛翔弾発射を想定し、空港周辺で多数の隊員を動員して検索や警戒にあたってきた。
しかし、飛翔弾を使ったゲリラは2008年を最後に起きていない。一方で、海外の国際空港では爆発物や銃器を使ったテロが相次いでいる。16年3月にはベルギーのブリュッセル、同年6月にはトルコのイスタンブールで自爆テロなどが起き、多数の人が死傷した。
こうした情勢の変化に加え、来年の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)や20年の東京五輪・パラリンピックを控え、警察庁は空警隊のテロ対応能力の向上を図る。部内の配置を見直して全体の人員を減らす一方、銃や爆発物、NBC(核・生物・化学兵器)テロに対処する部隊を強化。専門的能力がより高い隊員の配置や装備資機材の充実を進める方針だ。(編集委員・吉田伸八、八木拓郎)