「欧州に行くのに、お前の金を使わせてもらったよ」。エーゲ海に面したトルコ西部イズミル県にある車の修理工場で働くシリア人のムハンマドさん(38、仮名)はこの夏、欧州への渡航費用として密航業者を名乗るシリア人の男に渡した1800ドル(約20万円)をだまし取られた。金は親族から借りたものだった。 金を持ち逃げした男は行方不明になり、約2週間後にかけてきた電話で、こう言ったという。 「ありがとう。欧州に着いたよ。俺も欧州に渡る金が必要だったんだ。ドイツで金を稼げたら、返すから」 2回の被弾、15回の越境 ムハンマドさんはもともと、シリアの北部アレッポの自動車修理工だった。内戦の激化に伴い、アサド政権からかかった予備役への召集を逃れるため、反体制派の支配地域へ移り住んだ。「私はアサド政権支持でも反体制派支持でもない。でも、私が兵隊に取られれば、どうやって妻と2人の子どもは食べていくのか。他に選択肢はなかった」と振り返る。 転居後の14年、戦闘の激化に伴い、アサド政権軍に狙撃された。病院に搬送されて一命は取り留めたが、体内には弾が残る。寝たきりの生活を経て約1年後、タクシー運転手として働いていたところ、今度は流れ弾が車体を貫通。足を負傷した。 16年6月、迫り来る政権軍から逃れるため、反体制派が最大拠点とするトルコ国境の北西部イドリブ県に転居。その頃、オランダに渡った友人から、「オランダでの生活は素晴らしい。子どもは学校に通えていないんだろう。君も欧州に来いよ」と電話で誘われたという。 ムハンマドさんはまずトルコに渡ろうと決意し、工面した計1200ドル(約13万円)を一家の渡航費用として、密航業者に支払った。トルコへの越境を試みてはトルコ側で拘束、送還されることを繰り返した後、15回目の挑戦でようやくトルコに脱出できた。 だが、トルコでの生活も楽ではなかった。労働許可は得られず、ようやく探した修理工場の仕事は月給1200トルコリラ(約2万5千円)。半分は月の家賃で消えてしまう。トルコ語もわからず、トルコ人の友人もいない。「自分に学問さえあれば、トルコでも、もっといい条件の職を見つけられたはずだ」と語り、今でも欧州を目指す理由をこう説明した。 「欧州で、子どもに最高の教育を受けさせたい。トルコに来ても惨めな暮らししかできない。戦争から逃れてきたのだから、シリアには絶対に戻りたくない。欧州に行くしかない。死ぬ覚悟はできている」 欧州難民危機から3年。いま、シリア内戦を逃れた難民の63%、約360万人がトルコに集中する。受け入れは限界に近付いている。 ■狭まる欧州… |
投降した友は遺体になった シリア難民、行き場ない現状
新闻录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
相关文章
拿捕のイラン船「行き先の確証得られれば解放」 英外相
うその求婚、性暴力2週間 「ISの娘なんか」家族孤立
「イスラム国」残党の暴虐 掃討されても、消えぬ苦しみ
イランタンカー船長ら保釈 英領政府、制裁違反容疑巡り
92歳のおばあちゃん、魂の訴え アラブ嫌い首相も拍手
米国の有志連合提案で高まる緊張 ホルムズ海峡とは?
ホルムズ海峡の有志連合 自衛隊派遣なら日本の選択肢は
イラン精鋭部隊、英タンカーを拿捕未遂 米報道
緊張のホルムズ海峡で追悼式 イラン航空撃墜から31年
リビア首都の移民収容施設に空爆、44人死亡
サウジ国務相「ゆすり行為だ」 イラン核合意制限破り
アフガン首都の国防省前で爆発 1人死亡、105人負傷
選挙やり直させ、それでも負けた トルコ与党連敗の衝撃
そのとき、信仰を捨てた エジプトの若者に広がる無神論
サウジの空港攻撃1人死亡 イエメン武装組織が犯行主張
野党候補、前首相に勝利宣言 イスタンブール市長再選挙
「尊厳とカネ、交換しない」米国の招待、拒否した理由は
イスタンブール市長選、与党候補敗北 再選挙が傷広げる
トルコ、知られざる軍事力 無人機もヘリも自前で生産
イラン、米の無人機撃墜 「領空侵犯」主張、米は否定
米偵察機撃墜「国連憲章に沿う行動」 イラン大使が書簡
イラク南部バスラにロケット弾 イラク人職員ら3人負傷
「タンカー全力で助けたのに」イラン大統領が米など批判
避難先のイランで、シリアへ派兵され アフガン人の苦難
イラン革命防衛隊「米の無人偵察機を撃墜」 緊張高まる










