国内フリーエージェント(FA)権を行使してオリックスから阪神に移籍した西勇輝投手(28)が14日、大阪市内のホテルで入団会見に臨み、縦じまのユニホームに初めて袖を通した。同じ関西でも阪神は観客動員数がオリックスよりも多く、注目度が高い。さらにFA移籍ともなれば、期待値は上がる。今季はオリックス担当として右腕を見てきたが、阪神でも活躍できるのか。
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今でも覚えている西の言葉がある。交流戦まっただ中の6月5日のことだ。偶然か、場所は甲子園。阪神戦前の練習終了後におそるおそる話を聞いた。
このとき西は5試合連続で勝ち星から遠ざかっていた。完全に試合を壊したわけではなく、打線の援護がない試合が続いていた。ストレスがたまっているのではと思ったが、予想外の反応が返ってきた。
「今はいいイメージしかない。早く投げたくてたまらない」と笑うと、こう続けた。「日々、進化しているって実感できているから。だから、ぶれることはない」。前向きな言葉がどんどん出てくることに驚いた。次のヤクルト戦では7回無失点で、勝ち投手に。自分自身を冷静に分析できるから、勝ち星に一喜一憂することがないのだろう。
今回の入団会見後の囲み取材でも冷静だった。報道陣は威勢のいいコメントが欲しいもの。「完投、完封を狙っていきたいか」という質問には、「完投や完封をして、次の試合が2イニングで終わってしまうくらいだったら、常に7回まで投げるほうがいい」。また、「年間200イニングを目指したいか」と聞かれると、「今は分業制。なかなか200というのは難しい」とし、「160~180イニングをコンスタントに投げていけば、おのずと成績が出る」。決してリップサービスはしない。
西のすごみは「自分自身を冷静に分析する能力」だと思う。それは、この日の報道陣とのやりとりの中でも垣間見られた。阪神でも淡々と、自分の仕事をやってのけるのではないか。この日、改めてそう思った。(辻隆徳)