韓国大統領府が権限のない民間人の監視などを行っていたとの疑惑が持ち上がり、波紋を広げている。大統領府は元職員に一部越権行為があったことを認めつつ、組織としての関与を否定。野党は「自浄能力がない」と文在寅(ムンジェイン)政権を批判している。
公務員の汚職などを監視する大統領府民情首席秘書官室の特別監察班に所属していた元職員が14日、韓国メディアに告発した。
元職員は、文氏側近の駐ロシア大使の金銭授受疑惑を大統領府に報告したが、検察が捜査をせずに黙殺されたと証言。同室の権限を越え、ある外交省職員の私生活や、民間人である元首相の長男を監視していたことも暴露した。
大統領府は17日、駐ロシア大使の疑惑については検察の調査で潔白が証明されたと説明した。外交省職員のケースは、外交文書流出の問題を調べる過程で、この職員に国家公務員法違反にあたる私生活上の問題が見つかったと釈明。民間人の監視は元職員が勝手に行ったと主張した。
最大野党、自由韓国党の金秉準(キムビョンジュン)非常対策委員長は17日、文氏が大統領選当時に違法な監視を防ぐと約束したはずだと指摘し、「偽善的な態度だ」と批判。メディアも連日この疑惑を大きく報道。朝鮮日報が元職員のインタビューを掲載している。
大統領府の元高官は18日、「民情首席秘書官室に派遣された情報機関要員らは、官民の関係なく情報収集するのが義務だと考えている。違法かどうかは別の問題だ」と語った。(ソウル=牧野愛博)