フランスのルメール経済・財務相は、大手IT企業の広告収入などに税金をかける「デジタル課税」を来年1月から始めると17日の記者会見で明らかにした。「ジレジョーヌ」(黄色いベスト)運動と呼ばれる反政府デモを鎮める目的の政策で出費がかさみ、財政悪化が見込まれるためだ。
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ルメール氏は、IT企業が広告収入やデータ売買によって得た収入を対象にする、と説明した。年間5億ユーロ(約650億円)の税収を見込むという。だが、具体的な課税方法や対象企業など、詳細は明らかにしていない。
導入まで2週間足らずとなった段階で突然、フランス政府が課税を発表したのは、来年の予算案で国内総生産(GDP)比で政府の財政赤字を3%以内とする欧州連合(EU)の財政ルールが守れなくなる見込みになったからだ。
なかなか収まらないジレジョーヌのデモの対策費として今月、最低賃金の引き上げなど約100億ユーロ(約1兆3千億円)の家計支援策を打ち出さざるを得なくなり、想定以上に歳出が膨らむとの予想になった。財政再建の旗を掲げ続けたいマクロン政権は、少しでも財政赤字の幅を抑えようと、デジタル課税に財源を求めたというわけだ。
だが、マクロン大統領はもともと、EU改革の一環として加盟国が協調した課税を訴えていた。EUの欧州委員会は3月、売上高などが一定以上のIT企業を対象に、広告やデータ売買で得た収入に課税する案を提案。一部の国が反対したため、ドイツとフランスが課税対象を絞る案を出し、来春までの合意を目指していたところだった。
デモにうろたえるように政策がぶれる様子に、EU加盟国からはマクロン氏の指導力を疑う声も出始めた。AFP通信によると、ポーランドのチャプトビチ外相は17日のテレビ番組で、フランスのデモや財政赤字に言及し「フランスは欧州の病人だ。まず自分の国の秩序を取り戻すべきだ」と皮肉った。(パリ=疋田多揚、ロンドン=寺西和男)