天皇陛下は23日、85歳の誕生日を迎えた。事前の記者会見では、来年4月末の退位を見据え「天皇としての旅を終えようとしている」「支え続けてくれた多くの国民に衷心より感謝する」と涙声で語った。象徴としての歩みを振り返り、「譲位の日を迎えるまで、引き続きその在り方を求めながら、日々の務めを行っていきたい」と述べた。
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ひとたび口にした言葉に全身全霊 悲しみ、忘れない陛下
誕生日前の会見は即位翌年の1990年からほぼ毎年行われてきたが、今回が最後となった。在位中の会見としても最後となる見通しで、陛下は約16分間、何度も感極まり、言葉を詰まらせながら思いを語った。
戦争を経験した天皇として、平和への思いに時間をかけた。戦後の平和や繁栄が多くの犠牲で築かれたことを忘れず「戦後生まれの人々にも正しく伝えていくことが大切」とし、「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵(あんど)しています」と語った。
また、皇太子時代を含めて11回にわたり訪れた沖縄について「実に長い苦難の歴史」をたどってきたと言及。皇后さまと歴史や文化を理解するよう努めてきたといい、「沖縄の人々が耐え続けた犠牲に心を寄せていくとの私どもの思いは、これからも変わることはありません」と述べた。
心に残ることとして、平成の時代に多発した自然災害を挙げた。多くの死者や被害があったことに「言葉に尽くせぬ悲しみを覚えます」。ボランティア活動など、人々の間に助け合いの気持ちや防災の意識が高まってきたことに勇気付けられると述べた。
来年4月に結婚60年を迎える皇后さまとの歩みも振り返った。「深い信頼」のもとで伴侶との旅を続けてきたと述べ、「長い年月、皇室と国民の双方への献身を、真心を持って果たしてきたことを、心から労(ねぎら)いたく思います」と感謝の気持ちを明かした。
最後に、代替わり後の新時代に言及。新天皇となる皇太子さま、皇嗣(こうし)となる秋篠宮さまについて「皇室の伝統を引き継ぎながら、日々変わりゆく社会に応じつつ道を歩んでいくことと思います」と語った。(島康彦)