西日本豪雨の被災者の多くが、自治体が賃貸住宅を借り上げた「みなし仮設」で暮らす。しかし入居後に物件の欠陥が見つかったり、間取りや設備がニーズに合わなかったりしても、住み替えは認められておらず、我慢して住み続けている人もいる。
岡山県倉敷市真備(まび)町地区の自宅1階が浸水した楠木育美さん(56)は、昨年8月から夫(58)と地区に隣接する同県総社市にある棟続きの2階建て住宅で暮らす。
被災後、浸水を免れた自宅2階で過ごしていたが、倉敷市内に住む長女(30)の出産が近づいた。「里帰りできるように」と、いまの住宅に入居した後、欠陥に気づいた。築32年で、全体が傾いているのだ。
「孫のために」と考えていた2階の部屋は、ペットボトルを寝かせて置くと、西の方へ勢いよく転がっていく。楠木さんはバランス感覚をつかさどる耳の三半規管に不調を感じ、頭痛が治まらなくなった。
1月2日、岡山市内の母親宅で孫や娘らと新年を祝った。昨年までは真備町の自宅に家族が集まり、楠木さんがつくったおせち料理を食べていた。「こんな家においでと言えない。しかたがない」
昨年7月中旬、総社市の不動産…