日曜に想う 編集委員・福島申二
天気図に縦縞(たてじま)が並ぶとき、季節風は雪を降らせて山を越え、関東平野で空(から)っ風になる。去年の師走の一日、吹いてくる風に向かうように列車に乗って、長野県の上田市を訪ねた。
関東の冬晴れが、軽井沢を過ぎるあたりから雪催(もよ)いになった。故・金子兜太さんが揮毫(きごう)して昨年2月に除幕された「俳句弾圧不忘の碑」は、冬枯れた丘の木立の中に静かに立っていた。
俳句弾圧とは、時局にそむく作品をつくったとして、1940年代に治安維持法違反容疑で俳人が相次いで捕らえられた事件をいう。「不忘の碑」の説明文によれば少なくとも44人が検挙された。
碑には弾圧を受けたうち17人の句が刻まれている。その一人、渡辺白泉(はくせん)は今月30日が没後50年の命日になる。白泉の名は知らなくても、この句は知っているという人は多いのではないか。
〈戦争が廊下の奥に立つてゐた〉
いつしか忍び寄ってきた戦争が、気づけば暗がりにぬっと立っている。戦慄(せんりつ)的な暗喩の句は、昭和の戦争のイメージを呼び覚まして不朽である。
もう一つ、応召して水兵になった横須賀海兵団時代の句も忘れがたい。
〈夏の海水兵ひとり紛失す〉
海に落ちるかして水兵が行方不明になったのだろう。それを「紛失」と表すことで、人がモノのように扱われる非情さを万の言葉にも増して暗示する。
去年の秋以降は、国会の審議にこの一句を思い出すことが多かった。
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外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法の改正は、粗雑と拙速をきわめる審議に終始した。新たな法には、自分がそうしろと言われたら耐えられないようなことを、他人(外国人)には求める冷ややかさが垣間見えている。
たとえば「特定技能1号」とい…