韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は10日午前、大統領府で年頭の記者会見を行い、日韓関係の悪化について「日本の政治家が政治争点化し、拡散させていることは賢明な態度ではない」と述べ、日本の対応に問題があるとの認識を示した。日韓が元徴用工訴訟判決などをめぐって対立するなか、日本政府が日韓請求権協定に基づいて9日に要請した協議には直接言及しなかったうえ、具体的な解決策も示さなかった。 日本「弱腰見せられない」 韓国との関係、悪化の一途 レーダー照射、沈静化図る韓国 抗議非公表、日本に求め 文氏は「(韓国)政府は司法の判断を尊重しなければならない」とも指摘。韓国側の対応には問題がないと強調しつつ日本側の対応を批判した。日韓関係がさらに悪化するのは避けられない状況だ。 文氏は「韓日が新たな外交関係を結んだが解決できなかった問題がある。韓国が作ったのではない。日本政府は、もう少し謙虚な態度を示すべきだ」と訴えた。 そのうえで、日本企業が元徴用工らに損害賠償するよう命じた韓国大法院(最高裁)判決について「三権分立で政府は介入できない。日本は判決に不満を表明できるが、仕方がないという認識を持つべきだ」と指摘。「政治的に争って未来志向を妨げるのは望ましくない」とも述べ、日本側の対応を批判した。 具体的な解決策については「未来志向で、真剣に知恵を集めるべきだ」と語るにとどめた。韓国外交省は9日夜、日本政府が要請した請求権協定に基づく協議について「綿密に検討する」との立場を表明しているが、韓国政府当局者によると、「決まった対策は現時点ではない」という。 文氏は、日韓慰安婦合意に基づいて設立された財団を解散するとした問題や、海上自衛隊の哨戒機が韓国軍艦艇に火器管制レーダーを照射されたとする問題については言及しなかった。 日本統治時代の1919年に起きた独立運動が3月1日に100年を迎えることには冒頭発言で触れ、「我々は植民地と独裁から抜け出した」と語った。 文氏は会見で、北朝鮮の核開発などの影響で中断している開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)観光の両事業の再開を歓迎する考えを表明した。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が1日、無条件で再開に応じる考えを示していた。 事業再開にあたっては国連などの経済制裁が壁となる。文氏は「残る課題である制裁の早期解決のため、米国など国際社会と協力していく」と語った。「制裁解除は非核化の速度による」とし、北朝鮮に具体的な措置を取るよう要請。米国にも「相応の措置も必要だ」と訴え、北朝鮮の主張にも配慮した。 文氏は昨年6月に続く2回目の米朝首脳会談と、昨年に実現できなかった正恩氏のソウル訪問について、「遠くない時期に開催される」と説明した。正恩氏の今月の訪中で米朝首脳の再会談の時期が近づいたと指摘し、首脳会談を準備する米朝高官協議の早期開催に期待感を示した。 国連の制裁決議違反の可能性があるとの指摘がある南北の道路と鉄道連結事業については、「我々の経済の新しい活路になる」と改めて意欲を示した。 文氏は「正恩氏は、非核化が(朝鮮戦争の)終戦宣言や在韓米軍の地位と関係しないことを認めている」と指摘。朝鮮戦争の休戦協定が平和協定に転換しても、在韓米軍の地位は米韓が主導する問題だと正恩氏は認識している、とした。 文氏は冒頭発言の大半を、韓国内で懸念が広がっている雇用や福祉問題への対策に充てた。革新(進歩)系の文氏は分配重視の経済政策を進めているが、「政府の経済政策への信頼が下がった。政府は状況を非常に深刻に捉えている」と述べた。韓国内では野党などから、「政府は過度に経済へ介入している」との批判が出ている。文氏はこれを念頭に、「政府の政策基調は間違っていなかった」「経済施策の変更には不安が伴うが、必ず進むべき道だ」とも語った。(ソウル=牧野愛博) |
韓国大統領が日本批判「政治家が争点化、賢明ではない」
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