韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が10日午前、大統領府で年頭の記者会見を行い、北朝鮮の核開発などの影響で中断している開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)観光の両事業の再開を歓迎する考えを表明した。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が1日、無条件で再開に応じる考えを示していた。
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ただ、事業再開にあたっては国連などの経済制裁が壁となる。文氏は「残る課題である制裁の早期解決のため、米国など国際社会と協力していく」と語った。そのうえで「制裁解除は非核化の速度による」とし、北朝鮮に具体的な措置を取るよう要請。米国にも「相応の措置も必要だ」と訴えた。
文氏は昨年6月に続く2回目の米朝首脳会談と、昨年に実現できなかった正恩氏のソウル訪問について、「遠くない時期に開催される」と説明した。正恩氏の今月の訪中で米朝首脳の再会談の時期が近づいたと指摘し、首脳会談を準備する米朝高官協議の早期開催に期待感を示した。
国連の制裁決議違反の可能性があるとの指摘がある南北の道路と鉄道連結事業については、「我々の経済の新しい活路になる」と改めて意欲を示した。
文氏は「正恩氏は、非核化が(朝鮮戦争の)終戦宣言や在韓米軍の地位と関係しないことを認めている」と指摘。朝鮮戦争の休戦協定が平和協定に転換しても、在韓米軍の地位は米韓が主導する問題だと正恩氏は認識している、とした。
文氏は冒頭発言で、日韓関係を悪化させている海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題や元徴用工訴訟の判決などには触れなかった。日本統治時代の1919年に起きた独立運動が3月1日に100年を迎えると言及し、「我々は植民地と独裁から抜け出した」と語った。
文氏は冒頭発言の大半を、韓国内で懸念が広がっている雇用や福祉問題への対策に充てた。革新(進歩)系の文氏は分配重視の経済政策を進めているが、「政府の経済政策への信頼が下がった。政府は状況を非常に深刻に捉えている」と述べた。韓国内では野党などから、「政府は過度に経済へ介入している」との批判が出ている。文氏はこれを念頭に、「政府の政策基調は間違っていなかった」「経済施策の変更には不安が伴うが、必ず進むべき道だ」とも語った。(ソウル=牧野愛博)