オーストラリア外務省は24日、中国出身のオーストラリア人作家ヤン・ヘンジュン氏が中国国内で拘束されていることを明らかにした。中国外務省も同日、拘束の事実を認めた。中国のヤン氏の弁護人によると、北京市の国家安全局が居住監視状態に置いており、スパイ容疑だという。
オーストラリアは、米国が諜報(ちょうほう)機関の情報を密接な同盟5カ国で共有する「ファイブ・アイズ」の一員。豪政府は昨年8月、次世代通信規格「5G」の通信網整備を巡って中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を排除する決定をしていた。華為問題で米国やカナダと対立する中国がオーストラリアにも圧力をかけてきた可能性がある。
中国外務省の華春瑩副報道局長は24日の会見で、拘束されたオーストラリア人は「楊軍」という名前だとした上で、国家安全に危害を与えた容疑で捜査を受けていると明らかにした。
ヤン氏の知人、シドニー工科大の馮崇義・准教授によると、ヤン氏は今月18日、滞在中の米ニューヨークから妻子と空路で中国・広州に向かい、19日に着いたところで拘束された模様だ。ヤン氏らの次の目的地だった上海には妻子だけが到着したという。
豪メディアによると、ヤン氏は中国政府の元外交官。豪州に亡命し、中国政府に批判的な意見をブログに投稿したりしてきた。2011年にも数日間、中国で消息不明になったことがある。
中国当局は23日、在北京の豪大使館にヤン氏の拘束を伝えた。ペイン豪外相は24日、記者会見で「中国当局が、透明性を持って、公正に対処するよう求めていく」と述べた。
豪政府によると、24日、中国の魏鳳和(ウェイフォンホー)・国防相との会談のために北京を訪れたパイン国防相は魏氏に、ヤン氏が大使館員による支援を遅滞なく受けられるように要請した。魏氏は、この件を個人的には知らないが、ヤン氏は適切に処遇されるだろうと応じた。(シドニー=小暮哲夫、北京=延与光貞)