日雇い労働者向けのドヤ(簡易宿泊所)が外国人観光客が泊まるホテルになるなど、変わりゆく釜ケ崎(大阪市西成区)。街の今を記録にとどめようと、市民大学「釜ケ崎芸術大学」(釜芸)が独自のかるたをつくった。
読み札に労働者の印象的な言葉やふるまいを織り込み、絵札にはプロのカメラマンが撮影した風景や人物の写真を採用。失われつつある労働者の街の哀歓や息づかいを伝えている。
発案したのは詩人でNPO法人「こえとことばとこころの部屋」(ココルーム)代表の上田假奈代(かなよ)さん(49)。日雇い労働や路上生活をしてきた人たちに表現する楽しさを感じてもらおうと、7年前から釜芸を運営している。
上田さんが釜ケ崎にかかわるようになったのは16年前から。この間、街は大きく様変わりした。労働者が高齢化し、カラオケ居酒屋が増え、外国人観光客が多く行き交う街になった。
「このままだと労働者の街だった釜ケ崎が忘れられる日がくるのでは」という危機感から、一昨年秋から作製に取り組み、大阪市の助成金も得て、今月、200セットが完成した。
かるたという表現方法を選んだのは、楽しみながらたくさんの人に伝えたかったから。「あ」から「ん」まで46枚の読み札の文章は、上田さんが耳にした労働者の言葉や見かけた光景をつづった。
「ん」は「ん、と力んで、歯かけてん。道路に埋まってるわ」。力仕事で力んで歯を悪くした労働者から聞いた言葉だ。
「み」は「みめうるわしく、ス…