中国やフィリピンが領有権を主張している南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島のファイアリー・クロス礁で、中国政府が「海上救助センター」を開設したと、中国国営新華社通信が29日、報じた。これに対し、フィリピンのパネロ大統領報道官は31日、「困っている船員が救助されるかもしれず、我々は感謝すべきかもしれない」と発言、国内で議論を呼んでいる。
新華社通信の報道では、同センターの設立は「海上航行の安全を守るため」としている。さらに、スビ礁にも海上の緊急対応のための新たな救助船を配備しており、2隻の救助船が過去6カ月で16人を救助したと報じている。
パネロ氏は31日の記者会見で同センターの建設について、記者から「目的は救助であってフィリピン人を脅すために使うことはないと思うか」と質問されると、「中国を信じるしかない」と述べた。
フィリピンは2016年7月、中国の南シナ海での権利主張を否定する常設仲裁裁判所の判決を勝ち取った。だが、同年6月にドゥテルテ大統領が就任後、経済支援を受ける中国との関係を重視する姿勢をとり続けている。(ハノイ=鈴木暁子)