政治断簡
「多くの統計は、額面通り受け取るとウソばかりである。統計は、数字という魔術によって、人々の常識を麻痺(まひ)させる」。統計入門書として有名なダレル・ハフ著「統計でウソをつく法」の一節だ。
通常国会は「統計不正」で荒れ模様。厚生労働省の「毎月勤労統計」で無作為抽出でない不正な抽出が行われた。
昨年には厚労省の労働時間調査でも不正が発覚。裁量労働制で働く人には単なる労働時間を、一般労働者には「最長の残業時間」を尋ねた。質問が異なる調査を単純比較して、一般労働者の労働時間の方が長くなるとの結果を導き、安倍晋三首相も国会で裁量労働制の意義を強調した。
無知でも恣意(しい)的でも、偏ったサンプル抽出や異なる質問の調査比較は、いずれも「統計の禁じ手」。今回を機に、総務省が調べた56の基幹統計のうち24統計に不正や誤りがあったというから驚きだ。日本統計学会も「公的統計の信頼性に深刻な打撃を与えた」と批判声明を出した。
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学生時代、数学科で数理統計学を専攻した際のテキスト、杉山明子著「社会調査の基本」の巻頭言を読み返した。「一般の人たちには本物の調査か、手抜きした調査かの区別がつかない。大事な方針決定のための調査が不適切であったとなると、その責任は重大である」。そう統計を扱う心構えが書かれている。
「統計でウソをつく法」の著者は「だまされないためにだます方法を知る」ことが必要と本を執筆。最終章に統計のウソを見破る方法として、「統計の出所」「調査方法」「問題すり替え」など検証すべき5項目を列挙している。
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首相は施政方針演説で、統計不正を謝罪しつつ、統計数字をいくつも登場させた。例えば、「新三本の矢」の成果として「児童扶養手当の増額、給付型奨学金の創設を進める中で、ひとり親家庭の大学進学率は24%から42%に上昇した」。早速、厚労省にこの数字を取材してみた。
データは5年ごとに実施してい…