2016年の米大統領選でロシアがトランプ氏に肩入れしたとされる「ロシア疑惑」を巡り、マラー特別検察官が近く捜査報告書をまとめる。トランプ氏側とロシアとの関係をどこまで解明するかが注目されるが、捜査に批判的なバー司法長官が就任したことで、報告書が開示されないとの懸念も出ている。(ワシントン=杉山正)
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ロシア疑惑報告書、機密扱いの壁 米識者に見通しを聞く
「米国にとって最も厄介な敵、ロシアの支援を受けて(トランプ氏は)当選したのかも知れない」
ロシア疑惑に初期捜査から関わったマケイブ前連邦捜査局(FBI)副長官は今月、米メディアで振り返った。
捜査は2016年7月に始まった。ハッキングで流出した民主党の大量のメールが内部告発サイト「ウィキリークス」(WL)で暴露されたためだ。民主党の候補者指名争いを巡る不正を示唆する内容が含まれ、内紛を引き起こした。同党全国委員会トップが引責辞任し、クリントン氏に大打撃を与えた。
ロシアの介入は二つのパターンが判明している。一つはサイバー攻撃によるメールのハッキング。もう一つは、ソーシャルメディアを使った情報工作だ。どちらもトランプ氏を利した。
トランプ陣営とロシアの介入に接点はあったのか。
カギ握る元補佐官
鍵となるのは、トランプ氏の30年来の盟友で選挙顧問も務めたロジャー・ストーン被告だ。マラー氏は1月、ストーン被告を偽証の罪などで起訴した。ストーン被告は仲介者を通じてWLのアサンジュ代表と接触しており、接触は陣営幹部の指示だったと起訴状で明かされた。16年8月以降、ストーン被告はWLの暴露計画情報を陣営に逐一伝えていた。ただ、あらかじめWLやロシアと共謀していたかまでは明らかになっていない。
関連してマラー氏が捜査を進めるのが「トランプタワー密会」だ。トランプ氏の長男ジュニア氏、娘の夫クシュナー氏、マナフォート元選対本部長らが、ロシア政府に近いロシア人弁護士とニューヨークのトランプタワーで面会した。
時期は16年6月で、WLの暴露前だ。クリントン氏に不利な情報を提供したいと弁護士から持ちかけられたジュニア氏が面会に応じた。ジュニア氏は「有用な情報がなかった」と説明するが、その詳細が報告書に記載される可能性がある。
さらに重要なのが、司法取引でマラー氏に捜査協力するフリン元大統領補佐官の存在だ。フリン被告は選挙後の16年12月、キスリャク駐米ロシア大使(当時)と対ロ制裁緩和について協議したとされる。選挙中のロシアとの結託を解明する上でフリン被告は鍵を握る。マラー氏が昨年12月に裁判所に提出した書面では「機微に触れる情報」を提供したとフリン被告を評価。禁錮刑を求めないとする異例の意見を添えた。
■司法妨害、高いハ…