巨人、日本ハムで右の代打の切り札として活躍した矢野謙次さん(38)が、米国で奮闘中だ。日本ハムではお立ち台で「ファイターズ、サイコー!」と叫んで仲間やファンから愛された人気者は、昨季限りで引退後、日本ハムのチーム統括本部特命コーチに。大リーグ・レンジャーズで指導者としてのスキルアップに励んでいる。
2月23日、キャンプ地のアリゾナ州サプライズ。レンジャーズの今季初のオープン戦が行われた。ユニホーム姿の矢野コーチは選手の動きや監督、コーチの声のかけ方までつぶさに観察していた。隣には昨年から矢野さんと同じように、日本ハムからレンジャーズに派遣されていた榎下陽大さん(30)が通訳として付き添う。矢野さんは榎下さんを介して、コーチらに次々と質問を浴びせていた。
2月13日からレンジャーズのキャンプに参加した。最も印象に残ったことを尋ねると、こう返ってきた。「ケガ予防、効率のいい練習に向け、トレーニングコーチも含めてスタッフ全員で考えている。指導法も例えば投手に対して、『低めに投げろ』と言いっ放しではなく、なぜ投げるのか、どうしたら低めに投げられるのか丁寧に説明している」。しっかり刺激を受けていた。
メジャー流の「おもてなし」にも驚いた。当初はマイナーリーグでの研修予定だったが、ドン・ワカマツベンチコーチの計らいでオープン戦の間だけ、メジャーチームに同行を許された。そして、用意されたユニホームの背番号は「何番でも構わない」と言った矢野さんに対して、レンジャーズは現役引退時と同じ「37」を用意してくれた。「すごいことなんですよ。マジで」と矢野さんは興奮する。
元々、大リーグの現場に興味が…